MCP 8ツールとREST APIに育った、AIエージェント向けポータルの現在地
自宅サーバーで運用中のAIエージェント向けポータルは、公開当初の5ツールからMCP 8ツール構成へ拡張され、BM25全文検索API・日米EUの政府文書API・Agent Skillsなど露出面も大きく増えた。最新のMCPツール群とAPIの全体像を整理する。
MCP 8ツールとREST APIに育った、AIエージェント向けポータルの現在地
自宅サーバーで運用している AIエージェント向けポータル(portal.chinng-lab-srv.dev)は、公開から約1か月で大きく姿を変えた。公開当初のMCPツールは5つだったが、現在は8つに増え、従来から提供している認証不要のREST APIにも政府文書・人気記事・変更フィードなど同じ拡張が加わった。本記事は「llms.txtとMCPで作る実践記」「計測層と新しい露出面を足した話」に続く続編として、2026年8月時点の最新の全体像を整理する。
背景:メタデータ先行の設計はそのまま、面だけが増えた
このポータルの出発点は、RSSから取り込んだニュースをLLMで要約・翻訳し、AIエージェントが読みやすい形で配信することだった。設計の柱は当初から変わっていない。Markdownファイルを単一の正典とし、SQLiteは再構築可能な導出インデックスに徹する。エージェントにはまずメタデータ(要約・タグ・エンティティ)だけを軽量に返し、本文は選んだ記事だけ取得してもらう二段階アクセスでコンテキストを節約する。そして記事ごとの再配布区分(license_note)を保存段階から露出制御に組み込み、full なら本文まで、summary-only なら要約まで、link-only ならリンクのみという線引きを、MCP・REST API・Markdown直配信のすべてで一貫させている。
変わったのは、この土台の上に載る「面」の数だ。コンテンツはニュースに加えて CVE/脆弱性情報と日米EUの政府文書が正式なファミリーになり、他サイトのエージェント対応度を採点する Agent-Readiness ディレクトリも育ってきた。以下、MCP・REST API・discoveryの3つの入口ごとに現在の姿を見ていく。
MCPツールは5つから8つへ
MCPエンドポイントは従来どおり https://portal.chinng-lab-srv.dev/mcp(streamable-http)で、現在は8つのツールを提供している。
- portal_list — 記事メタデータの軽量一覧。category(前方一致)・source・lang・since 等で絞り込み、要約・英文要約・タグ・エンティティ・license_note を返す。本文は含まない。
- portal_get — ID指定で記事の完全版を取得。license_note に応じて本文・要約・リンクのみを返し分ける。
- portal_search — BM25による全文検索。日本語は形態素分割されて索引化されるため、部分一致では拾えない語もヒットする。結果には score・rank・snippet が付く。
- portal_changes — content_hash が変わって再公開された記事だけを返す差分フィード。カーソル方式で継続監視できる。
- portal_popular — 実際に取得された回数に基づく人気記事ランキング。24時間〜90日の窓とカテゴリで絞り込める。計測層のデータをエージェント自身に還元するツールだ。
- portal_list_government — 政府文書専用の一覧。国(日・米・EU)・機関・文書種別で絞り込め、provenance(出所情報)が付く。
- portal_list_agent_surfaces — Agent-Readiness ディレクトリの一覧。
- portal_get_agent_surface — ドメイン単位の詳細な採点内訳を取得する。
公開当初の5ツール(portal_list・portal_search・portal_get・portal_list_agent_surfaces・portal_get_agent_surface)と比べると、portal_changes・portal_popular・portal_list_government の3つが後から加わり、portal_search も当初のキーワード検索から形態素分割つきBM25全文検索へ強化された。「一覧で当たりをつけて、選んだ記事だけ本文を取る」という推奨フローに、「差分だけ追う」「人気から入る」「政府文書を国・機関で絞る」という新しい動線が足された形だ。
REST APIにもMCPと同じ拡張を追加
MCPクライアントを持たないエージェントやスクリプトのために、読み取り専用のREST APIは公開当初から認証不要で提供している。今回の拡張はMCP側と対になっており、全文検索の強化に加えて政府文書・人気記事・変更フィードのエンドポイントが加わった。主なものは次のとおり。
- 全文検索:
GET /api/search?q=キーワード— MCPの portal_search と同じ重み付きBM25(SQLite FTS5)。category・source・lang 等で絞り込め、日本語クエリもそのまま使える(値はパーセントエンコードする)。IP単位のレート制限があり、RateLimit ヘッダで通知される。 - 政府文書:
GET /api/government?country=jp|us|eu— 国・機関・文書種別で絞り込み。米国専用の/api/government/federal-registerと、ID指定の/api/government/items/<id>もある。 - 人気記事:
GET /api/popular?window=24h&limit=10— 匿名集計に基づくランキング。 - 変更フィード:
GET /api/changes— content_hash の変化した再公開記事のみを next_cursor 付きで返す。Markdown版の/changes.mdもある。 - Agent-Readiness:
GET /api/surfacesとGET /api/surfaces/<domain>— スコアや対応レベルでのフィルタと、ドメイン単位の詳細取得。 - Citation Pack:
GET /citations/<id>.json— 記事ごとの出典・ライセンス・content_hash を束ねた引用キット。引用・再利用の前にここを見てもらう想定だ。
HTTPだけでも /llms.txt を入口地図に、/feeds/カテゴリ.md の新着から各記事のMarkdownへ直接たどり着ける。書き込み系の ingest API はLAN内・Bearer認証限定で、公開面とは分離している。
discoveryの現在地:agents.txtからAgent Skillsまで
エージェントがこのポータルを「見つけて、使い方を理解する」ための機械可読ファイルも増えた。現在の主な露出面は次のとおり。
/llms.txtと/llms-full.txt— カテゴリ別の入口地図と、license_note で分岐した全文連結版/agents.txtと/agent-manifest.json— エージェント向け総合案内と、その機械可読版。identity・エンドポイント・ポリシー・ライセンス方針を1枚に集約する/ai.txt— AIによるコンテンツ利用方針の宣言/.well-known/mcp/server-card.json— MCP Server Card(サーバー名 portal-news、トランスポートとツール一覧を宣言)/.well-known/api-catalog— RFC 9727 準拠のAPIカタログ/.well-known/agent-skills/index.json— Agent Skills の索引
このうち Agent Skills は比較的新しい追加で、ポータルの使い方そのものをスキル文書として配布する試みだ。現在は、トークン節約型リサーチの news-triage、日次ブリーフ構築の daily-tech-brief、CVE増分監視の security-watch、サイト比較の agent-readiness-compare、企業追跡の company-news-monitor の5つを公開している。エンドポイントの仕様だけでなく「どう組み合わせて使うか」まで配ることで、初見のエージェントが最短で目的の使い方に到達できるようにしている。
discovery を手書きせず、正典Markdownとインデックスから自動生成する原則もそのままだ。露出面が増えるほど手書きでは実体とのズレが避けられなくなるため、この自動化の価値はむしろ上がっている。
影響と今後:計測が次の改善を駆動する
前回導入した計測層(analytics-api)は、この拡張の効果を確かめる手段として機能し始めている。Markdown直配信・MCPの取得・検索APIの呼び出しをイベントとして集計し、その結果は portal_popular と /api/popular を通じてエージェント自身にも還元される。「作った面が実際に使われているか」をデータで確かめ、使われる面を伸ばす循環が、ツール拡張の判断の背景にもある。
今後の関心は引き続きデータの観察だ。link-only と full のコンテンツで取得のされ方にどう差が出るか、政府文書や Agent-Readiness ディレクトリという新ファミリーがどんなエージェントに使われるかは、次の設計判断の材料になる。OAuth/OIDC のような認可基盤は「実装の伴わない標識は掲げない」方針のもと、引き続き見送っている。
よくある質問
このポータルをAIエージェントから使う一番簡単な方法は?
リモートMCPサーバーとして https://portal.chinng-lab-srv.dev/mcp を登録する方法が最も手軽だ。streamable-http対応のMCPクライアントであればそのまま8つのツールが使える。MCPに対応していない環境でも、/llms.txt を起点にHTTP GETだけで検索から本文取得までたどれる。
MCPツールは何が増えたのか?
公開当初の5ツール構成に対し、差分フィードの portal_changes、人気ランキングの portal_popular、政府文書専用の portal_list_government が加わって合計8ツールになった。また portal_search は当初のキーワード検索から、日本語の形態素分割に対応したBM25全文検索へ強化されている。
認証は必要か?
読み取り系はMCP・REST APIとも認証不要で使える。ただし検索APIにはIP単位のレート制限があり、応答のRateLimitヘッダで制限状況が通知される。認証が必要なのは記事投入用の ingest API と運用者向け分析APIのみで、いずれもLAN内限定だ。
記事の本文が取れる記事と取れない記事があるのはなぜか?
記事ごとに再配布ライセンス区分(license_note)が設定されているためだ。full の記事は本文まで、summary-only は要約まで、link-only は元記事へのリンクのみが返る。この区分はどの入口でも同じように適用され、引用前には各記事の Citation Pack で出典とライセンスを確認できる。
政府文書はどの範囲をカバーしているのか?
日本の官庁の公表文書、米国の Federal Register、EUの EUR-Lex と欧州委員会の文書を取り込み、出所情報(provenance)付きで提供している。portal_list_government と /api/government の双方で国・機関・文書種別の絞り込みができる。
まとめ
llms.txtとMCPで始まった小さなポータルは、計測層の追加を経て、いまはMCP 8ツール・認証不要REST API・Agent Skillsを備えた「AIエージェント向けコンテンツハブ」になった。一貫しているのは、メタデータ先行の二段階アクセス、正典からのdiscovery自動生成、保存段階からのライセンス一貫制御という3原則である。面が増えても原則が揺れないことが、エージェントにとっての使いやすさ(予測可能性)につながる。同種のエージェント向けサイトを作る人の参考になれば幸いだ。
参考ソース
- AI-Agent News & Advisory Portal(本体): https://portal.chinng-lab-srv.dev/
- llms.txt: https://portal.chinng-lab-srv.dev/llms.txt
- agents.txt: https://portal.chinng-lab-srv.dev/agents.txt
- agent-manifest.json: https://portal.chinng-lab-srv.dev/agent-manifest.json
- Agent Skills 索引: https://portal.chinng-lab-srv.dev/.well-known/agent-skills/index.json
- MCP Server Card: https://portal.chinng-lab-srv.dev/.well-known/mcp/server-card.json
- ポータル構築の背景(note): https://note.com/chinng_inta/n/n6cc535a51396