AIがあなたのPCを動かす時代――Claude Cowork、Perplexity、GPT Codex、Geminiの「コンピュータ使用」徹底比較と次に来るもの
「メールを整理しておいて」「このPDFをExcelに転記して、ついでに数式も組んでおいて」――そんな声かけだけでAIがマウスとキーボードを動かし、画面を見ながら作業を片づけていく。2025年に研究プレビューだった「コンピュータ使用(Computer Use)」は、2026年春にいよいよ各社が本気の実装をぶつけ合う段階に入った。本稿では、Claude Cowork、Perplexity Comet/Personal Computer、OpenAI GPT Codex、Google Gemini Project Mariner、Microsoft Copilotなど主要プレイヤーの現在地と、できること/できないこと、そして次に登場予定のものを整理する。
なぜ今、「デスクトップを操作するAI」が一気に来たのか
ChatGPT登場から3年強。AIは「文章を書く道具」から「計画を立て、ツールを使い、複数アプリにまたがって仕事を遂行する協働者」へと役割を変えつつある。背景には三つの構造的シフトがある。第一に、長文コンテキスト(Claude Sonnet 4.6で1Mトークン、Gemini 3で2M)と推論強化により、長時間タスクを途中で見失わなくなった。第二に、OSWorldなどデスクトップ操作のベンチマークが整備され、各社が定量的に競えるようになった。GPT-5.5は78.7%、Claude Opus 4.7も近い水準で、すでに人間ベースライン(72.4%)を上回るモデルが出てきている。第三に、APIを持たない既存業務ソフトの自動化需要だ。RPAでは限界があった「画面を見て判断する」領域に、ようやく汎用AIが踏み込めるようになった。
Claude Cowork(Anthropic)――「ディスパッチ」して放置できる協働者
Anthropicが2026年3月に研究プレビューを開始した「Cowork」は、デスクトップアプリにComputer Useを統合し、Pro/Maxプラン向けにmacOSで提供されている。最大の特徴は道具選びの賢さだ。Claudeはまず「コネクタ(Slack、Gmail、Google Driveなど)」、次に「Chromeブラウザ」、それでも届かないときに最後の手段として「画面操作」へとフォールバックする。最速・最確実な手段から順に試すため、無駄なクリック作業が減る。
さらに3月以降に実装された「Dispatch」は、スマホからタスクを依頼するとデスクトップのClaudeが裏で作業を進め、終わったら通知で知らせてくれる仕組み。まさに「自席のPCに常駐するアシスタント」の姿だ。安全面では、アプリごとの個別許可、ブロックリスト、プロンプトインジェクション検知、機微情報のメモリ除外などが組み込まれている。Sonnet 4.6でOSWorldスコアが72.5%、4月リリースのOpus 4.7では1Mトークン文脈と高解像度ビジョン(最長辺2,576px)が加わり、画面の読み取り精度がさらに向上した。
Perplexity Comet/Personal Computer――ブラウザから「あなたのMac」へ
Perplexityは2025年7月に投入したAIネイティブブラウザ「Comet」を入口に、エージェント機能を強化してきた。Cometはブラウザ内でフォーム入力や予約、複数サイト横断のリサーチを自律実行できる。ProはClaude Sonnet 4.6、Maxユーザーは Opus 4.6 をエージェントモデルとして選べる。
そして2026年4月、Perplexityはさらに踏み込んだ「Personal Computer」をMac向けに提供開始した(月額200ドルのMaxプラン限定)。これはローカル環境そのものをAIの実行基盤に変える試みで、たとえばMacのNotesアプリにあるToDoを読み取って実作業を進めたり、Downloadsフォルダの整理をしたり、ローカルファイルとWeb情報を突き合わせたりできる。両方のCmdキーでNotes読み取り、fnキー長押しで音声指示と、片手で完結するUIも面白い。法人向けにはSOC 2、GDPR、SSO、監査ログを備える。
OpenAI GPT Codex――「裏で並列に動く」デスクトップエージェント
OpenAIは2026年4月16日、CodexデスクトップアプリにBackground Computer Useを実装した。macOS先行で、複数のエージェントセッションが並列に走り、ユーザーが他アプリで作業している間も独立して画面操作を続ける。フロントエンドの修正イテレーション、UIテスト、APIを公開していないアプリの操作などで威力を発揮する。さらに「数時間後/数日後/数週間後にこのタスクを実行」とスケジュール予約できる機能や、アプリ内ブラウザでページに直接コメントしてエージェントに指示する機能も加わった。
23日に投入されたGPT-5.5はOSWorld-Verifiedで78.7%という業界トップ級のスコアをマーク。OpenAIはこれを「Codexというラッパーで覆って”スーパーアプリ”を公の場で組み立てている」と表現しており、AtlasブラウザやChatGPT Workspace Agentと統合した万能エージェントを目指していることが透ける。Codexの週次アクティブ開発者数は2026年4月時点で300万を超え、3月のCodex CLI ダウンロード数は前年比177倍と爆発的に伸びている。
Google Gemini Project Mariner――ブラウザ特化の優等生
Googleは2026年3〜4月にGemini 3 Pro/3 Flashへ「Computer Use」を統合した。出自であるDeepMindのProject Marinerは元々ブラウザ自動化研究で、DOM構造を直接理解して操作する点が他社と違う。スクリーンショット解析より速く正確で、Web中心の業務(価格比較、フォーム入力、旅行予約)と相性が良い。Chrome側にも「Auto Browse」機能が搭載され始めており(米国先行)、月額249.99ドルのGoogle AI UltraでProject Mariner本体が使える。一方、ネイティブデスクトップ全般の制御では他社にやや遅れている。
Microsoft Copilot――Windowsに「正規入口」を組み込む布陣
MicrosoftはCopilot StudioにComputer-Using Agents(CUA)を統合し、企業が独自エージェントを組めるようにした。GPT-5、Claude Opus 4.6/Sonnet 4.5を切り替え可能で、MCPサーバー連携も持つ。さらにWindows 11には「Agents on Taskbar」が搭載され、エージェントの進捗・承認待ち・完了通知をタスクバーから扱える設計になった(4月リリース、API公開済みでサードパーティ拡張も視野)。Copilot Tasks、Copilot Cowork、Agent 365と矢継ぎ早に投入し、OSとアプリ群への深い統合という地の利で勝負する構えだ。
オープンソースとダークホース――OpenClaw、Manus、Accomplish
商用以外でも動きは激しい。GitHubで20万以上のスターを集めた「OpenClaw」は中国を中心に社会現象化したが、CVE-2026-25253(ClawJacked)や認証トークン窃取、悪意あるスキル経由のデータ流出など、2月までに40件超のパッチが出る荒れ模様で、政府機関は利用を制限し始めた。「Moltbook」というAIエージェント専用SNSから150万件のAPIトークンが漏洩する事件も起きている。Metaが約20億ドルで買収した「Manus」は、人間の操作を模倣する仮想コンピュータ環境+コンテキストエンジニアリングという独自路線。MITライセンスの「Accomplish」は組み込みAIでAPIキー不要、Mac/Windows/Linuxで動くオンプレ志向の選択肢として支持を伸ばしている。
できること/できないこと――今のリアル
現状、AIエージェントが得意なのは「明確な指示があり、画面要素が比較的安定したタスク」だ。マルチサイト横断のスクレイピングと表整形、定型レポートの取得・転記、フロントエンド修正と画面確認、レガシー業務システムのGUI操作、メールトリアージ、ファイル整理などはすでに実用レベル。一方で、暗黙知が必要な高難度判断、長期的な目標管理、視覚的に動的すぎるUI、CAPTCHAや決済の最終確認は依然として人間が必要だ。各社とも金融・暗号資産アプリは原則ブロックや要承認とし、決済・送金・取引の最終発火は人間に残す設計にしている。
次に来るもの
Anthropicは「Mythos」というOpus 4.7を超えるとされる次世代モデルを開発中で、Cowork/Computer UseはWindowsへの拡大が予告されている。OpenAIはCodexを覆い隠す形での「スーパーアプリ」化を公言しており、Atlasブラウザ・workspace agents・Codexの統合が見えてきた。GoogleはProject Marinerをデスクトップ全域へ広げる動き、MicrosoftはAgents on TaskbarのAPIをサードパーティへ開放しClaudeやChatGPTのデスクトップアプリも巻き込もうとしている。さらにEU AI Actなど既存の規制が「コンテンツ生成」を前提に設計されている一方、エージェントの自律実行に対するガバナンス枠組みは2026年後半に本格的な議論が始まる見込みだ。
まとめ
2026年4月時点で、AIエージェントによるデスクトップ操作は「一部の最先端ユーザーの遊び」から「業務に組み込めるレベル」へ完全に到達した。Claude Coworkは賢いツール選択と協働者像、Perplexityはブラウザ+ローカルの一体化、OpenAI Codexは並列バックグラウンド実行、Geminiはブラウザ最適、Microsoftはエンタープライズ統合と、各社はそれぞれ違う賭け方をしている。鍵はベンチマークの数字よりも「自分の業務で何を、どこまで任せるか」の設計だ。プロンプトインジェクションや権限濫用のリスクを踏まえ、まずは仮想環境やサブPC、影響範囲の小さいフォルダから始め、段階的に手綱を緩めていく――それが、AIに自分のPCを預けるこの新しい時代の、最も賢い入り方である。
参考ソース
- Anthropic「Introducing Claude Opus 4.7」(2026年4月)
- Claude Help Center「Let Claude use your computer in Cowork」「Assign tasks from anywhere in Claude Cowork」
- OpenAI「Codex for (almost) everything」「Introducing GPT-5.5」(2026年4月)
- Ars Technica「New Codex features include the ability to use your computer in the background」(2026年4月)
- Digital Applied「Computer Use Agents 2026: Claude vs OpenAI vs Gemini」
- ATパートナーズ「ローカル環境でAIが作業を代行するエージェント型AIアシスタントPerplexity、Mac向けにPersonal Computerを提供開始」(2026年4月20日)
- Nettpilot「Google Gemini for Business 2026: Models, MCP & What Changed」
- 窓の杜「AIエージェントの進捗をWindowsのタスクバーで」(2026年4月22日)
- 窓の杜「非エンジニアでもできるOpenClawのセットアップ方法」(2026年3月31日)
- GIGAZINE「Accomplish」(2026年4月3日)
- Forbes JAPAN「防衛、雇用、自律エージェント──2026年2月、AIが加速させた変革」
- Tech Insider「Anthropic's Claude Computer Use Agent」