ゲーム開発者の85.8%が生成AIを活用——CESA初調査が示す著作権の壁

CESAが2026年9月17日発刊の「ゲーム産業レポート2026 プレビュー版」で、ゲーム開発者の85.8%が生成AIを業務活用していることが判明。期待は業務効率化に集中する一方、最大の課題は著作権・知的財産権だった。

コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が2026年9月17日に発刊した年次レポート「CESAゲーム産業レポート2026 プレビュー版」で、日本のゲーム開発者の85.8%が生成AIを業務で活用していることが明らかになりました。業界団体による生成AIの実態調査はこれが初めてです。

同じ週、レベルファイブが新作PVの「AI疑惑」に釈明文書を出し、スクウェア・エニックスがFF14の二次創作グッズでAI生成物の使用を禁じました。数字の上では定着した生成AIが、ユーザーの目に触れる場所では今なお強い摩擦を生んでいる——この落差こそが、2026年秋のゲーム産業の現在地です。

背景:CESAが初めて業界内の生成AI利用を数えた

CESAは東京ゲームショウ(TGS)や日本ゲーム大賞、開発者会議CEDECを主催する業界団体で、毎年「ゲーム産業レポート」で国内市場を数字にしてきました。ただし生成AIの利用実態そのものを調べたのは今回が初めてです。

今回のプレビュー版が依拠しているのは、例年実施している次の2種類の調査です。

  • 「ゲーム開発者の就業とキャリア形成 2026」 — 商業ゲーム開発者を中心に有効回答1349サンプル
  • 「2026 CESA会員企業調査」 — 会員企業220社のうち48社が回答

つまり「現場の開発者」と「企業としての方針」の両方から生成AIを捉えた構成になっています。プレビュー版は非売品で、9月17日に開幕したTGS2026(千葉・幕張メッセ、21日まで)の会場で報道関係者に配布されました。約460ページの完全版は12月上旬に発売予定です。

数字が示す定着:生成AIを日常的に使う開発者が6割超

85.8%という数字の内訳は、「日常的に利用している」が63.0%、「時々利用している」が22.8%です。レポートはこれを「生成AIは一部の先進的な利用者だけのものではなく、ゲーム開発の現場に広く定着しつつある」と分析しています。

注目したいのは、「たまに触っている」層よりも「日常的に使っている」層のほうが3倍近く多い点です。試験導入の段階を越え、日々のワークフローに組み込まれている状況がうかがえます。

生成AI以外のAI技術についても、実証段階を含め約7割の企業が導入済みで、前年の約5割から大きく伸びました。生成AIブームが、それ以外のAI活用も引き上げている構図です。

企業が期待しているのは、まず「効率化」

会員企業に生成AI活用で期待する効果を聞いた結果は、次のとおりです(複数回答、社数)。

期待する効果 社数
業務効率化・生産性向上 38
開発期間の短縮 30
開発・運営コストの削減 29
多言語対応・グローバル展開の促進 24
新たな表現・アイデアの創出 22

上位3つがいずれも「速く・安く作る」方向に集中しているのが特徴です。一方で、回答した48社のうち多言語対応は24社、新たな表現の創出は22社と半数前後が挙げており、単なるコスト削減だけを見ているわけではないことも読み取れます。

現場が敷いたガードレール:生成AI運用の「人の監修」と著作権

調査で興味深いのは、企業が生成AIをどう管理しているかという項目です。管理・運用上の取り組みとして最も多かった回答は「人による確認・修正・監修を行っている」でした。次いで、利用ツールの指定・制限、出力物をそのまま使わない運用が多数を占めています。

CESAはこれを「人の監修を軸に、安全な運用体制を整備しつつ、生産性の向上を図っているゲーム産業の姿」と表現しました。生成AIを自動生成装置ではなく、人間が最終責任を負う前提の下書きツールとして位置づけている、ということです。

そして活用における課題のトップは「著作権・知的財産権」でした。学習データの出所、出力物が既存作品に似てしまうリスク、成果物の権利帰属——どれも制作現場だけでは決められない論点です。日本では学習データの透明性を求める「生成AIプリンシプル・コード」の整備も進んでおり(関連記事参照)、産業側の自主的なガードレールと制度側のルール整備が同時進行しているのが現状です。

数字の裏側で起きていた「AI疑惑」騒動

この調査が公表された直前、対照的な出来事が2つ起きています。

1つはレベルファイブのケースです。 同社が9月10日のオンライン発表会「LEVEL5 VISION 2026 II」で公開した「妖怪ウォッチ2 覇道」のPVとイメージイラストに対し、「電線の太さがバラバラ」「自販機の釣り銭取り出し口がない」「自転車のブレーキレバーがない」といった指摘が国内外から相次ぎ、生成AI使用の疑惑が広がりました。

同社は9月17日に説明文書を公開し、指摘された箇所はいずれもデザイナーによる意図的な簡略化やヒューマンエラーで、ゲーム内容へのAIの直接使用は一切ないと説明しました。ただし一部のPVについては「安易なAI使用をしてしまった」と認めて謝罪し、修正版をTGS開幕日に公開。今後は「AIの使用を効率化の範囲内にとどめ、ユーザーに直接届ける映像ではAIの直接使用を避ける」と表明しています。

文書の中で同社は「現状、ヒューマンエラーに関しても、AIの使用と誤解される状況となっており、多くの方々が不安を感じられている状況」と述べています。手描きであっても「AIらしく見える」だけで疑われる——生成AIが普及した結果として生まれた、新しい種類のレピュテーションリスクです。

もう1つはFF14のケースです。 スクウェア・エニックスは9月16日、「ファイナルファンタジーXIV」の著作物利用条件を改定し、二次創作グッズなど有体物の制作を自作・無償に限って解禁しました。その一方で、AIで生成した二次創作を使ったグッズと3Dプリンタによる制作は禁止としています(この禁止はあくまで有体物の制作に関するもので、二次創作全般で生成AI利用を新たに禁じたわけではありません)。

開発現場では85.8%が使い、ユーザーコミュニティ向けのルールでは明確に線を引く。同じ産業の中でも、レイヤーによって線の引き方が大きく異なっています。

影響と今後:ゲーム産業で効率化の果実は誰に還元されるのか

CESA調査は「使われている」ことを示しましたが、「うまくいっている」ことまでは示していません。実際、同じ週にITmediaで最も読まれた記事の1つは、工数を最大9割減らしたDeNAですら効率化が働き方に還元されない現実を扱ったものでした。ツールの導入率と、組織としての成果はまだ一致していません。

今後の焦点は、おおむね次の3点に整理できます。

  • 開示のあり方 — ユーザーに届く成果物でAIをどこまで使い、どう説明するか。レベルファイブの対応は、事後説明より事前の線引きのほうが低コストであることを示しました。
  • 権利処理の実務化 — 課題トップの著作権・知的財産権について、学習データの出所確認や出力物のチェックを、精神論ではなく工程として組み込めるか。
  • 効率化の再投資 — 短縮した開発期間を人員削減に充てるのか、品質や新しい表現に回すのか。この選択が、開発者側の受け止め方を大きく左右します。

12月上旬に発売される完全版レポート(約460ページ)では、より詳細なクロス集計が公開される見込みです。2年目の調査で85.8%がどう動くか、そして「課題トップ=著作権」という構図が変わるかどうかが、次の観測ポイントになります。

よくある質問

CESAの調査で85.8%という数字はどう算出されたのか

商業ゲーム開発者を中心とする1349サンプルの有効回答を集めた「ゲーム開発者の就業とキャリア形成 2026」で、業務における生成AIの利用状況を尋ねた結果です。「日常的に利用している」63.0%と「時々利用している」22.8%を合計した数値が85.8%にあたります。

ゲーム会社は生成AIをどのように管理しているのか

CESA会員企業調査では、管理・運用上の取り組みとして「人による確認・修正・監修を行っている」という回答が最も多くなりました。ほかに、利用できるツールを指定・制限する、生成物をそのまま使わずに必ず加工・検証するといった運用が多数を占めています。

ゲーム業界が生成AI活用で最も課題と感じているのは何か

著作権・知的財産権です。学習データの出所、出力物が既存作品に類似するリスク、成果物の権利帰属といった論点が含まれ、制作現場だけでは判断しきれないため、業界の自主ルールと国の制度整備の両輪で対応が進められています。

レベルファイブの「AI疑惑」は結局どうなったのか

同社は9月17日の説明文書で、指摘された電線や自販機などのディテールはすべて手描きによる簡略化やヒューマンエラーであり、ゲーム内容へのAIの直接使用はないと説明しました。ただし一部のPVでの「安易なAI使用」は認めて謝罪し、修正版を公開。今後はユーザーに直接届ける映像でのAI直接使用を避ける方針を示しています。

完全版のレポートはいつ読めるのか

約460ページの完全版は2026年12月上旬に発売予定です。9月17日に発刊されたプレビュー版は非売品で、東京ゲームショウ2026の会場で報道関係者に配布されました。

まとめ

CESAの初調査が示したのは、日本のゲーム開発現場で生成AIが「試すもの」から「日常的に使うもの」へ移行したという事実でした。85.8%という高い利用率の下で、企業は人による監修を軸にしたガードレールを敷き、最大の課題として著作権・知的財産権を挙げています。

一方で、レベルファイブの釈明とFF14の規約改定が示したのは、ユーザーの目に触れる領域では生成AIの扱いが依然として繊細だということです。効率化の数字と、受け手の納得感。この2つをどう両立させるかが、12月の完全版レポート以降のゲーム産業を見るうえでの軸になりそうです。

参考ソース

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