上司は「さん」付け派が25%に——国語世論調査で見えた言葉の世代差と職場の変化

文化庁が10月2日に公表した2025年度「国語に関する世論調査」では、上司を名字+「さん」で呼ぶのが望ましいとする人が25.5%に増え、「なるはや」「ツーカー」の使用には大きな世代差が出ました。「ひもとく」を本来の意味で答えた人は13.1%。数字から職場と世代の言葉の変化を整理します。

文化庁は2026年10月2日、2025年度「国語に関する世論調査」の結果を公表しました。上司を役職名ではなく名字に「さん」を付けて呼ぶのが望ましいと考える人は25.5%で、約30年前の調査から17ポイント近く増えています。一方で「なるはやで」は20代の7割超が使うのに70歳以上では1割未満、「ツーカーの」はその正反対と、同じ日本語のなかに世代ごとの“別の言語”が存在することも浮かび上がりました。

この記事では、国語に関する世論調査の主な結果を「職場の呼び方」「世代で分かれる言い回し」「意味が変わりつつある慣用句」「手書き・縦書き」の4つに分け、数字が何を示しているのかを整理します。

国語に関する世論調査とは何か

国語に関する世論調査は、日本人の国語に対する意識や理解の現状を把握するために文化庁が毎年実施している調査です。慣用句の意味の取り違えや新しい言い回しの広がりが取り上げられるため、毎年秋の公表時には広く報じられます。

報道によると、今回の2025年度調査の概要は次のとおりです。

  • 対象:全国の16歳以上の約6000人
  • 方法:郵送方式
  • 公表日:2026年10月2日

今回の結果で目を引くのは、国語に「関心がある」と答えた人が83.1%に達し、これまでの調査で最も高い割合になったことです。SNSなどを通じて文字でやりとりする機会が増え、自分や他人の言葉遣いを意識する場面が増えたことが背景にあるとみられています。言葉への関心が高まっているからこそ、世代や立場による言葉のずれも目につきやすくなっている、と読むこともできます。

上司の呼び方:「課長」が6割、でも「さん」付けは3倍に

調査では、部下が課長に呼びかける場面を想定し、どの呼び方が望ましいかを尋ねています。結果は次のとおりです。

  • 「課長」:62.9%
  • 名字に「さん」を付ける:25.5%
  • 「課長さん」:6.4%
  • その他・無回答:5.2%

多数派は今も役職名で呼ぶ「課長」です。ただし、同じ質問は過去にも2回行われており、名字に「さん」を付ける呼び方を選んだ人は1996年度が8.8%、2015年度が16.0%、今回が25.5%と、回を追うごとに増えています。約30年でおよそ3倍になった計算です。

世代別にみると、20代では42.5%が名字に「さん」を選んでおり、若い世代ほど浸透しています。文化庁の担当者は、役職ではなく「さん」付けで呼ぶことを推奨する企業があり、その影響が考えられるとの見方を示しています。

ここで注意したいのは、この設問が「実際にどう呼んでいるか」ではなく「どれが望ましいか」を聞いている点です。職場の慣行がすぐに変わったというより、「フラットに呼び合うほうがよい」という感覚が、若い世代を起点に着実に広がっていると捉えるのが妥当でしょう。

「なるはや」と「ツーカー」:世代で真逆になる言葉

今回の調査では、特定の年齢層や業界でよく使われる言い回しについて、「自分が使うことがあるか」と「他の人が使うのが気になるか」の両方を尋ねています。報道によれば、「気になる」という回答には、意味が分からない、なじみがない、不快に思う、といった受け止めが含まれます。

全体の結果は次のとおりです。

言い回し 使う 気になる
なるはやで(可能な限り急いで) 33.4% 44.7%
えいやで決める(思い切って決める) 23.9% 48.2%
正直ベースで言う(本音を率直に言う) 15.8% 46.7%
ツーカーの仲(気心が知れている仲) 47.8% 26.8%
交通整理する(複雑なことを整理する) 22.7% 44.2%

「なるはやで」は若者の言葉

「なるはやで」を使う人は、16〜19歳で74.1%、20代で76.4%に上ります。ところが30代で58.9%、50代で35.1%と年代が上がるにつれて下がり、70歳以上では7.2%にとどまりました。「気になる」と答えた人は逆に、20代の7.6%から70歳以上の71.7%へと増えていきます。

「ツーカーの」は年長世代の言葉

「ツーカーの」はちょうど逆の形です。70歳以上で66.8%、60代で66.1%が使う一方、20代は7.0%、16〜19歳は3.6%でした。年長世代にとっては当たり前の表現が、若い世代にはほとんど使われていないことになります。

「えいやで」は先細りの可能性

「えいやで決める」は、70歳以上の29.7%、50代の25.2%に対し、30代20.9%、20代11.3%と若いほど使われません。20代では「気になる」が58.1%に達しています。若い世代に引き継がれていないことから、今後使う人が減っていく可能性も指摘されています。

これらの数字が示すのは、「若者言葉が乱れている」という単純な話ではありません。若者が使う言葉は年長者に通じにくく、年長者が使う言葉は若者に通じにくいという、双方向のすれ違いです。

「ひもとく」「噴飯もの」:本来と違う意味で広がる慣用句

毎年注目される慣用句の意味については、次の結果が報じられています。

  • ひもとく:本来の意味とされる「関係する書物を読む」と答えた人は13.1%。69.9%は「真相を明らかにする」と回答
  • 噴飯もの:本来の「おかしくてたまらないこと」は34.1%。「腹立たしくて仕方ない」が55.1%
  • 流れに棹さす:本来は「傾向に乗って、ある事柄の勢いを増すような行為をする」という意味だが、68.9%が逆の意味で回答
  • 気が置けない:本来は「相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい」という意味だが、本来の意味と反対の意味がいずれも4割台で拮抗

「ひもとく」や「流れに棹さす」では、本来とは違う理解のほうが7割近くを占めています。ここまで広がると、本来の意味で使ったつもりでも、相手には別の意味で伝わる可能性が高いということです。文化庁の担当者も、本来の意味で理解していない人がいると知っておくことが円滑なコミュニケーションの参考になる、という趣旨の説明をしています。

「どちらが正しいか」を争うよりも、「誤解されやすい言葉だ」と知ったうえで、大事な場面では言い換えるという使い方が現実的です。

手書きと縦書き:「大切」と答える人は多いが使う機会は減少

デジタル化に関連する設問もあります。日常生活で文字を手書きする頻度が「ない」「あまりない」と答えた人は合計29.4%で、2014年度調査の27.3%から2.1ポイント増えました(2014年度は対面調査のため単純比較には注意が必要です)。

年代別では20代が33.9%で最も高く、16〜19歳は11.6%で最も低い結果でした。30代30.5%、50代31.6%、70歳以上30.7%と、年代による大きな差はみられません。一方で、手書きの習慣を「大切にすべきだ」と答えた人は80.4%に上り、漢字などを正確に身につけることにつながる、手書きの文字には個性や感情が表れる、といった理由が多く挙げられました。

縦書きについても、習慣を大切にすべきだと考える人が6割近くいる一方で、日常で使う機会は少なく、20代ではおよそ半数が「ない」と答えたと報じられています。「大切だと思う」ことと「実際に使う」ことの間に距離がある点は、手書きと共通しています。

影響と今後:職場で何を意識すればよいか

今回の国語に関する世論調査の結果は、職場や家庭でのコミュニケーションにそのまま当てはめて考えられます。

  • 呼び方:役職呼びが多数派であることは変わらないものの、若い世代ほど「さん」付けを望ましいと考えている。新入社員と管理職で「当たり前」が違う可能性がある
  • 社内用語:「なるはや」「正直ベース」「交通整理」などは、使う人より「気になる」人のほうが多い。世代や所属の違う相手には、具体的な期限や内容に言い換えたほうが確実
  • 慣用句:「ひもとく」「流れに棹さす」のように、本来と異なる理解が多数派になっている言葉は、文書や説明の場では誤解の余地が大きい
  • 書く習慣:手書きや縦書きは「大切」と考える人が多数でも、使う機会は減っている

言葉の意味や使われ方は時代とともに変わります。調査は毎年行われているため、「さん」付けの広がりや慣用句の理解が今後どう推移するかは、次回以降の結果で確認できます。

よくある質問

国語に関する世論調査とはどんな調査ですか

文化庁が毎年実施している、日本人の国語に対する意識や理解を調べる調査です。2025年度調査は全国の16歳以上の約6000人を対象に郵送方式で行われ、結果は2026年10月2日に公表されました。

上司を「さん」付けで呼ぶ人はどのくらい増えていますか

部下が課長に呼びかける際に望ましい呼び方として名字に「さん」を付けると答えた人は、1996年度の8.8%、2015年度の16.0%から、2025年度は25.5%に増えました。20代では42.5%がこの呼び方を選んでいます。最も多い回答は今も「課長」(62.9%)です。

「ひもとく」の本来の意味は何ですか

本来の意味とされるのは「関係する書物を読む」です。2025年度の国語に関する世論調査でこの意味を選んだ人は13.1%にとどまり、69.9%は「真相を明らかにする」と答えました。

「なるはや」と「ツーカー」の世代差はどの程度ですか

「なるはやで」を使う人は20代で76.4%、70歳以上で7.2%です。反対に「ツーカーの」を使う人は70歳以上で66.8%、20代で7.0%、16〜19歳で3.6%でした。全体では「なるはやで」が33.4%、「ツーカーの」が47.8%です。

手書きをしない人は増えていますか

日常生活で文字を手書きする頻度が「ない」「あまりない」と答えた人は29.4%で、2014年度調査の27.3%から2.1ポイント増えました。一方、手書きの習慣を大切にすべきだと答えた人は80.4%でした。

まとめ

  • 文化庁の2025年度「国語に関する世論調査」では、国語に関心がある人が83.1%と過去最高になった
  • 上司を名字+「さん」で呼ぶのが望ましいとする人は25.5%。約30年で8.8%から3倍近くに増え、20代では42.5%
  • 「なるはやで」は若い世代、「ツーカーの」は年長世代に偏り、世代間で通じにくい言葉が双方向に存在する
  • 「ひもとく」を本来の意味で答えた人は13.1%、「流れに棹さす」は68.9%が逆の意味で理解していた
  • 手書きを大切にすべきだと考える人は80.4%だが、手書きをほとんどしない人は29.4%に増えた

言葉の「正しさ」を競うよりも、相手との間にずれがあり得ると知っておくこと。今回の調査結果は、そのための具体的な手がかりになります。

参考ソース

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