Xiaomi MiMo-V2.6が最強のオープンウェイトモデルに——1.02兆パラメータは自宅で動くのか

Xiaomiが2026年9月21日に公開したMiMo-V2.6-ProがArtificial Analysis Intelligence Indexで46.32を記録し、オープンウェイトモデルの首位に立った。1.02兆パラメータMoEという規模、MITライセンス、指数タスクあたり0.13ドルという価格。そして「では自宅で動かせるのか」という問いに、数字で正面から答える。

要約:Xiaomiが2026年9月21日、MiMo-V2.6のProとFlashを公開した。Proは第三者ベンチマーク企業Artificial AnalysisのIntelligence Indexで46.32を記録し、Kimi K3(44)やQwen3.8 Maxを抜いてオープンウェイトモデルの首位に立った。アーキテクチャはMoEで総パラメータ1.02兆・アクティブ420億、コンテキスト1M、Pro-RLチェックポイントはMITライセンス。ただしXiaomi自身のベンチマーク表でも、Claude Opus 5と比較可能な14評価のうち10で劣後している。「世界一のモデル」ではなく「世界一のオープンウェイトモデル」であり、その差は小さくない。

何が起きたのか

スマートフォンと電気自動車のメーカーが、世界で最も強いオープンウェイトの言語モデルを出した。この一文が2026年9月の現実になった。

Xiaomiは9月21日、MiMoファミリーの最新世代としてMiMo-V2.6-ProとMiMo-V2.6-Flashを公開した。公式サイトの表現は「Artificial Analysis Intelligence Indexで46.32を記録し、Kimi K3とQwen3.8 Maxを上回って、現時点で最強のオープンソースモデルとなった」というものだ。

Artificial Analysisは、モデルベンダーから独立してベンチマークを集約している第三者機関である。そのIntelligence Index v4.3は、AA-Briefcase、GDPval-AA v2、Terminal-Bench 4.0、SciCode、Humanity's Last Exam、CritPt、AA-Omniscienceなど10評価の合成スコアだ。ここでMiMo-V2.6-Proの46は、xAIのGrok 4.6(44)やGoogleのGemini 3.8 Flash(41)といったプロプライエタリモデルを上回る。同日公開されたGrok 4.7が同じく46で並んでいる。

重みがダウンロードできるモデルが、重みを公開しないモデルの多くを追い越した。ここ数年繰り返されてきた「オープンは半年から一年遅れる」という経験則が、少なくともこの指数の上では崩れている。

背景:MiMoはどこから来たのか

MiMoはXiaomiが「built in public(公開の場で作る)」と掲げて育ててきたモデル系列で、V2.6は一世代前のV2.5から大きく跳ねた。

数字で見ると変化の幅がわかりやすい。エージェント型コーディングの評価DeepSWE v1.1では、MiMo-V2.5-Proの19.0に対してV2.6-Proは71.9。業務自動化を測るAutomationBenchは16.0から53.1へ。Terminal-Bench 4.0に至っては1.5から34.9である。前世代のMiMo-V2-Flashも、SWE-bench Verifiedでオープンソースモデル世界1位を取り、Claude Sonnet 4.5相当の性能を約3.5%のコストで提供すると謳われていた。V2.6は突然変異ではなく、「エージェント用途に絞って安く強くする」という一貫した方向の延長線上にある。

Xiaomiは今回、重みだけでなく技術レポート、強化学習の環境、学習コードも同時に公開した。外部が追試できる材料をある程度そろえている点は評価に値する。

なお「Nvidia製GPUではなく中国製チップだけで学習された」という話が、あるスタートアップCEOのX投稿を起点に広がっている。事実なら計算資源の地政学にとって大きな意味を持つが、現時点でXiaomi公式の裏付けは確認できていない。伝聞として扱うべきところだ。

中身を見る:ProとFlashは別物

公開された2モデルは、性格がかなり違う。

MiMo-V2.6-Pro は Mixture-of-Experts(MoE)で、総パラメータ1.02兆、トークンあたりのアクティブパラメータ420億。コンテキストウィンドウは100万トークン。テキスト・画像・動画・音声を入力できるネイティブomnimodalモデルで、Pro-RLチェックポイントはMITライセンスで配布されている。MITは商用利用も改変も再配布も許す、きわめて緩いライセンスだ。

MiMo-V2.6-Flash も同じくMoEだが、総パラメータ309B、アクティブ15B。ハイブリッドアテンションを採用し、コンテキストは同じく1M、最大出力は131.1Kトークン。API価格は入力100万トークンあたり0.14ドル、出力0.28ドル。

高頻度で回す用途でFlashが効くという評価が多いのは、この価格差とアクティブパラメータの少なさによる。主要ベンチマークを並べると輪郭がはっきりする。

評価 Pro Flash Kimi K3 DeepSeek V4.1 Flash
DeepSWE v1.1 71.9 67.9 69.0 74.2
ProgramBench 26.5 26.0 24.5 20.3
AutomationBench v1.0.6 53.1 52.3 46.7 54.8
Terminal-Bench 4.0 34.9 28.8 12.6 26.8
OSWorld-Verified 82.0 80.8 84.8 –
JobBench 62.0 61.2 54.3 45.8
CyberGym 94.0 95.1 80.0 88.1

(出典:Xiaomiローンチ投稿の付録より抜粋)

「世界最強」と言い切れない部分

ここからが重要で、ベンダー発表を額面どおり受け取るべきでない理由でもある。

Xiaomi自身のベンチマーク表において、Claude Opus 5と比較可能な14評価のうち10でMiMo-V2.6-Proは劣後している。差が大きいのはExploitBench、Terminal-Bench 4.0、ProgramBenchだ。

競技プログラミング的なProgramBenchは26.5に対しOpus 5が37.0。攻撃的セキュリティを測るExploitBenchは47.9に対しGPT-5.6 Solが78.5、SEC Bench Proも66.3対79.1である。ツールを叩き、ターミナルを操り、画面を見て作業する領域では強いが、最も難しい推論とセキュリティの攻め手では明確に差がある。

もうひとつ注意したいのは、MiMo Code Bench、MiMo Visual Coding、MiMo Cyber BenchがXiaomiの自社評価だという点だ。CyberGymの94.0やMiMo Cyber Benchの80.2は目を引くが、第三者が同じ条件で再現した結果ではない。

競合との比較も一枚岩ではない。DeepSeek V4.1 Flashは合成指数では39と水をあけられているが、Xiaomi自身の表でDeepSWE(74.2対71.9)、AutomationBench、Terminal-Bench 2.1ではMiMoを上回る。

そして用語の問題がある。MiMo-V2.6は「オープンウェイト」であって、必ずしも「オープンソース」ではない。重みはダウンロードできるが、学習データの全面公開までを意味するわけではない。この区別は曖昧にしないほうがいい。

コストの話:ここが一番効く

性能が横並びに近づいたとき、差がつくのは価格だ。

Artificial Analysisの指数タスクを1回走らせるコストで比べると、MiMo-V2.6-Proは0.13ドル。同じ指数で44点のKimi K3は2.00ドル。約15倍の開きがある。DeepSeek V4.1 Flashは0.27ドルで、これも安いがMiMoの倍だ。

さらにプロンプトキャッシュは、キャッシュ済み入力100万トークンあたり0.004ドル。1Mコンテキストを前提に長い文脈を繰り返し参照するエージェントを組む場合、この数字は効く。

つまりMiMo-V2.6の実質的な主張は「最も賢い」ではなく、「フロンティアのすぐ後ろに、桁違いに安く、かつ重みを手元に置ける形で並んだ」である。運用する側にとっては、後者のほうがはるかに実務的な意味を持つ。

本題:1.02兆パラメータは自宅で動くのか

ここが、重みが公開されていることの意味を試す場所だ。結論から言うと、Proを個人のホームサーバーで素直に動かすのは現実的ではない。

MoEはトークンごとに一部の専門家(エキスパート)しか使わないため、計算量はアクティブパラメータ分で済む。Proなら420億相当だ。しかしメモリは話が別で、どのエキスパートが呼ばれるかは事前にわからない以上、原則として全パラメータをどこかに載せておく必要がある。総パラメータ1.02兆は、8bit量子化でおよそ1TB、4bit相当まで落としてもおよそ500GBのオーダーになる。24GBや48GBのGPUを数枚束ねて届く数字ではない。

Flashの309Bでも、4bit相当でおよそ150GB前後。これも個人のデスクトップからは遠い。

では重みの公開は無意味かというと、そうではない。意味は三つある。第一に、中小規模の事業者やラボが自前で回せる。1TB級のCPUメモリを積んだサーバーは、個人には過剰でも組織には現実的な調達範囲だ。MoEのアクティブパラメータが小さいことは、エキスパートをSSDやCPUメモリからストリーミングする設計とも相性がいい。第二に、APIが止まっても、値上げされても、退役させられても、手元の重みは動き続ける。MITライセンスはこの保証を法的にも裏づける。第三に、蒸留や量子化、ファインチューニングの土台になる。家庭で動く規模のモデルの性能はこの数年、上位モデルからの蒸留で押し上げられてきた。

自宅のGPU1枚で完結させたいなら、当面は7Bから33B級を選ぶという判断は変わらない。MiMo-V2.6が変えたのは「自宅で動くモデルの上限」ではなく、その上流にある水源の質と価格である。

影響・今後

短期的に効くのは価格圧力だ。指数で44点のモデルが2.00ドル、46点のモデルが0.13ドルという並びは、中位価格帯のプロプライエタリモデルにとって厳しい。同じ処理を大量に回すワークロードでは、価格差がそのまま採用の可否になる。中期的には、「オープンウェイトはフロンティアから半年遅れる」という前提で組まれてきた調達計画が見直される。社外にデータを出せない業種ほど恩恵は大きい。

一方で警戒すべき点もある。CyberGymで94.0という数値を持つモデルの重みが、MITライセンスで誰でも取得できる状態になった。攻撃的セキュリティ(ExploitBench 47.9)では商用フロンティアに届いていないとはいえ、脆弱性探索能力を持つモデルの拡散は防御側のコスト構造を変える。

そして検証の問題が残る。第三者指数はあるが、自社ベンチが混在した発表をそのまま報じる流れは今回も見られた。読む側は、どの数字が第三者由来でどれが自社評価かを毎回確かめる必要がある。

よくある質問

MiMo-V2.6-Proは本当に「世界最強のモデル」なのか

いいえ。正確には「世界最強のオープンウェイトモデル」である。Artificial Analysis Intelligence Indexの46.32はオープンウェイト部門で1位だが、同日公開のGrok 4.7も46で並んでおり、Claude Opus 5にはXiaomi自身のベンチマーク表で比較可能14評価のうち10で劣後している。

MiMo-V2.6のライセンスは何か。商用利用できるか

MiMo-V2.6-Pro-RLチェックポイントはMITライセンスで公開されている。MITは商用利用・改変・再配布を許す非常に緩いライセンスである。ただし「オープンウェイト」は「オープンソース」と同義ではなく、重みが公開されていても学習データまで全面公開されているとは限らない点に注意が必要だ。

自宅のGPUでMiMo-V2.6を動かせるか

現実的ではない。Proは総パラメータ1.02兆で、MoEのため計算量はアクティブ420億相当で済むものの、メモリには原則として全パラメータを載せる必要がある。4bit相当でも500GBのオーダーになる。Flashの309Bでも4bit相当で150GB前後で、個人のデスクトップからは遠い。一方、1TB級メモリを積めるサーバーを調達できる組織なら自前運用の射程に入る。

ProとFlashはどちらを使うべきか

同じ処理を大量に回す高頻度ワークロードではFlashのほうが向く。Flashは総309B/アクティブ15Bで、API価格は入力100万トークンあたり0.14ドル、出力0.28ドル。指数スコアもProから大きくは落ちない。最も難しいタスクの精度を優先するならProを選ぶことになる。

競合のオープンモデルと比べてどうか

合成指数ではMiMo-V2.6-Pro(46)がKimi K3(44)とDeepSeek V4.1 Flash(39)を上回る。ただしDeepSeek V4.1 FlashはDeepSWE v1.1(74.2対71.9)やAutomationBench、Terminal-Bench 2.1でMiMoを上回っており、用途によって逆転する。リポジトリ規模のコーディングエージェントを組むなら、指数だけで決めず両方を実測することを勧める。

まとめ

MiMo-V2.6が示したのは、モデルの序列が変わったというより、選択肢の構造が変わったということだ。フロンティアのすぐ後ろに、重みを手元に置けて、MITライセンスで、桁違いに安いモデルが並んだ。

ただし「世界最強」という見出しは正確ではない。Xiaomi自身のデータがOpus 5への劣後を示しており、競技プログラミングと攻撃的セキュリティでは明確な差が残る。自社評価と第三者評価が混在したベンチマーク表を、区別せずに受け取るべきでもない。

自宅サーバーという観点では、1.02兆パラメータは依然として手の届かない規模である。それでも重みが緩いライセンスで公開されたことの意味は小さくない。APIの都合から独立した運用の可能性が広がり、下流の小型モデルを押し上げる水源が一段階よくなったからだ。ローカルで動かせるモデルの上限が上がるのは、たいていその半年後である。

参考ソース

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