ドンキがトイザらス日本事業を買収へ——米国で消えた「おもちゃの巨人」が日本で生き残る理由と、小売業再編の行方

2026年9月29日、大手玩具専門店「トイザらス」が日本の店舗運営から撤退する方針であることが報じられました。国内約150店舗を、「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が事業ごと買収する方向であると、共同通信や読売新聞などが伝えたものです。

トイザらスといえば、キリンのマスコット「ジェフリー」の姿を思い浮かべる人も多いでしょう。1991年の日本1号店開業から35年。日本のおもちゃ文化を支えてきた専門店チェーンが、大きな転換点を迎えます。ここで疑問が浮かびます。米国ではすでに姿を消した「おもちゃの巨人」は、なぜ日本でこれほど長く生き残れたのか。そして、なぜ今、店舗運営からの撤退なのでしょうか。

本記事では、9月29日の報道で何が決まったのかを整理したうえで、トイザらス日本が生き残ってきた構造、ドンキ(PPIH)の買収戦略、少子化下でも成長を続ける日本のおもちゃ市場、そして小売業再編の行方までを順に見ていきます。なお、本記事の内容は2026年9月30日朝時点の報道ベースであり、両社の公式発表はまだ出ていない点にご留意ください。主要な事実関係は、公開時に読売新聞の報道本文を直接確認しています。正式発表の内容が判明した時点で、本記事は更新する予定です。

9月29日の速報——トイザらス日本買収、何が決まったのか

まず、2026年9月29日の報道で判明した要点を箇条書きで整理します。

  • 何が報じられたのか: 玩具販売大手「トイザらス」が日本の店舗運営から撤退する方針であることが判明した、と共同通信が報じました(2026年9月29日配信)。読売新聞も、日本の店舗運営から撤退する方向であることと、PPIHが事業を引き継ぐ見通しを報じています
  • 売り手と買い手: 売り手は日本トイザらスの親会社「トイザらス・アジア」、買い手はPPIH。店舗や従業員の雇用などを含む国内事業を取得する見通しと報じられました(読売新聞)
  • 対象店舗: 国内約150店舗。全店をドンキ側が継承する方向と報じられています(共同通信)
  • 取得額: 100億円規模になるとみられる、と報じられました(読売新聞)。ただしこれは「関係者によると」として伝えられた情報で、確定した金額ではありません
  • 時期: 年内にも撤退が始まる可能性が指摘されています(日本経済新聞の報道を伝える二次情報。公式な日程は未公表です)

ここで誤解を防いでおきたいのが、「撤退=全店閉店」ではないという点です。報道の骨子は、店舗運営から手を引き、事業をPPIHが譲り受けるという「事業の譲渡」の方向です。約150店の継承が報道どおり実現すれば、当面は同じ場所での営業が続くとみられます(いずれも報道ベースの見通しです)。

一方で、2026年9月30日時点では正式な発表はまだ出ていません。産経新聞の報道によると、PPIHは本件について「回答できない」としています。次の項目は、いずれも両社の公式発表を待つ必要があります。

  • 買収金額の確定値(「100億円規模」は報道ベースの推計)
  • 法的なスキーム(株式譲渡か事業譲渡か)
  • 「トイザらス」「ベビーザらス」の屋号の扱いとブランド使用権
  • 対象資産の範囲と完了時期

「おもちゃの巨人」の盛衰——米国トイザらスはなぜ消えたのか

米国トイザらスの原点は、1948年にチャールズ・ラザラス氏がワシントンD.C.で開いた小さな玩具店です(Wikipedia「トイザらス」)。1957年にスーパーマーケット型の玩具販売モデルを導入して「おもちゃの巨人」と呼ばれる存在へ成長し、2005年には投資会社KKRに買収されました。ところが、この買収で背負った巨額の債務が後に重くのしかかります。Amazonなどのネット通販やウォルマートの安値攻勢の中で返済が苦しくなり、2017年9月18日に連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用を申請。債務総額は2017年4月末時点で52億ドル(約5,800億円)に上りました(同上)。2018年3月には米国事業の清算が決まり、国内735店がすべて閉鎖されました。当時の従業員は3万3,000人で、同年6月29日には最後の200店が閉店しています。

一方の日本法人は、1989年11月に日本マクドナルド創業者の藤田田氏が米国本部と提携して設立され、1991年12月に茨城県阿見町へ1号店「荒川沖店」を開店しました。日本のトイザらスが米国の破綻を乗り越えられたのは、日本市場の健闘というより構造的な理由が大きいとされます。2017年4月に日本法人は「トイザらス・アジア」のグループへ統合されており、同年9月の米国の財務再構築の対象外として、財務的に独立した組織として営業を続けたからです(Wikipedia「トイザらス」)。店舗戦略でも、米国が自家保有の大型店を抱えたのに対し、日本は賃貸・テナント出店が中心で、近年はショッピングセンター内の小型店へ軸足を移してきました。ただし業績そのものは厳しく、2025年12月期は売上高752億1,100万円・最終損失37億5,900万円で、2018年1月期の約1,395億円から売上はほぼ半減しています(Wikipedia「トイザらス」、NEWS FOREST)。

米国トイザらス vs 日本トイザらス

項目 米国トイザらス 日本トイザらス
創業/日本上陸 1948年、チャールズ・ラザラス氏がワシントンD.C.で創業(Wikipedia「トイザらス」) 1989年11月に設立、1991年12月に茨城県阿見町で1号店「荒川沖店」を開店(同上)
最盛期店舗数 2018年の清算時に国内735店をすべて閉鎖(Wikipedia「トイザらス」)。正確な最盛期の店舗数は出典未確認 2026年3月現在で約150店、前年は約160店(Wikipedia「トイザらス」、NEWS FOREST)。正確な最盛期値は出典未確認
経営破綻の有無 あり。2017年9月18日にチャプター11適用を申請、債務総額52億ドル(約5,800億円)(Wikipedia「トイザらス」) なし。ただし2025年12月期は最終損失37億5,900万円(同上、官報決算公告)
不動産モデル 自家保有の大型店中心。2005年の投資会社KKRによる買収後の債務が経営を圧迫(Wikipedia「トイザらス」) 賃貸・テナント出店中心。近年はイオンモールなどショッピングセンター内の小型店へ移行(同上)。賃貸比率の定量的内訳は未確認
破綻後の行方 2018年3月に清算決定。2019年に元社員らが「トゥルー・キッズ」を設立してブランド復活、2021年3月にWHPグローバルが買収(Wikipedia「トイザらス」) 破綻は回避。2017年4月にトイザらス・アジア傘下へ統合され、米国の財務再構築の対象外として営業継続(同上)
現在 WHPグローバル傘下で2022年からメイシーズと提携し小型店を展開。年末商戦向けに約120店の期間限定店と報じられる(Wikipedia「トイザらス」、NEWS FOREST) 2026年9月、PPIH(ドン・キホーテ)への事業譲渡の方針が報じられる(共同通信、読売新聞)

※数値はすべて取材時点で確認できた出典(Wikipedia「トイザらス」、NEWS FOREST、共同通信、読売新聞)に基づきます。店舗賃貸比率など公開情報で確認できない項目は「未確認」と記載しています。

なぜ日本のトイザらスは生き残れたのか——3つの構造要因

米国本社が2017年9月に連邦倒産法第11章を申請し、2018年3月に米国内735店を閉鎖した後も(Wikipedia「トイザらス」)、日本法人は営業を続けました。それは日本市場の健闘というより構造的な理由が大きいとされます(NEWS FOREST)。

1. 財務的に独立した「別法人」だったこと

2017年4月、日本トイザらスは米国本社とファン・リテーリングの合弁が運営する「トイザらス・アジア」の傘下に統合されました。トイザらス・アジアは2017年9月19日、米本社の財務再構築の対象外であると表明しました。2018年11月には事業主体の約85%株式が、担保付き上位債権を保有するタージ・ノートホルダーズに譲渡されましたが(同上)、破綻処理の枠外で営業を続けられたのです。

2. 賃貸・テナント出店中心の固定費構造だったこと

米国の重荷は自家保有の大型店でしたが、日本では1991年12月に茨城県阿見町へ1号店「荒川沖店」を開いて以降、郊外ロードサイドから近年はイオンモールなどショッピングセンター内の小型テナント店へ軸足を移し、面積縮小や移転で固定費を調整してきました(同上)。ただし賃貸比率の定量的な内訳は公開情報では確認できていません。

3. 日本のおもちゃ市場自体が縮んでいなかったこと

2025年度の国内玩具市場は前年比6.3%増の1兆1,664億円で過去最高、2020年度以降6年連続で拡大しています(日本玩具協会の市場規模調査をNEWS FORESTが報道)。トレーディングカードが3,384億円と市場の約3割を占め、キダルト需要と訪日客需要が子ども需要の減少を補う構造です(同上)。需要の受け皿が残ったことも存続を支えました。

ただし「生き残った」は「黒字だった」を意味しません。日本トイザらスは8期連続の最終赤字とされ(日本経済新聞の報道)、2025年12月期は売上高752億円・純損失約37億6千万円。売上高は2018年1月期の約1,395億円からほぼ半減しています(NEWS FOREST)。1992年1月にブッシュ大統領が橿原店を視察してから35年(同上)、事業譲渡に至ったのは、この構造的な赤字があるからです。

ドンキは何を買いたいのか——PPIHのM&A戦略の系譜

ドンキを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の原点は、1978年に安田隆夫氏が東京・西荻窪で開いた18坪の雑貨店「泥棒市場」です。2026年6月期の連結業績は売上高2兆4,452億60百万円、営業利益1,748億42百万円と、国内小売でも有数の規模に成長しました(Wikipedia「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」掲載の決算)。

成長を支えた道具の一つがM&Aです。特徴は、好調な会社ではなく、赤字や停滞にあえぐ総合小売を買い取ってドンキ型の業態に転換する点にあります。2007年10月に子会社化した長崎屋は「ドン・キホーテ」への転換で再建し、2019年1月に完全子会社化したユニーは「MEGAドン・キホーテUNY」へと生まれ変わりました。2026年7月1日にはスーパーのOlympicグループを簡易株式交換で完全子会社化し、店舗のドン・キホーテなどへの転換と、仕入の帳合統一による収益改善を掲げています(Impress Watch 2026年4月6日付)。

この系譜の延長でトイザらスを見ると、狙いは四つに整理できます(NEWS FORESTの分析)。第一に、全国約150店の既存の売り場と賃貸契約を一括で確保できること。第二に、家族連れやベビー需要という、ドンキが取りにくい客層との接点が増えること。第三に、ポケモンカードなどトレーディングカードやフィギュアといった、ドンキでも売れ筋のホビー商品の品揃えを専門店水準に引き上げられること。第四に、赤字の専門店を在庫回転の速いドンキ型の売り方に組み替える余地があることです。

会員基盤も焦点です。PPIHは電子マネー「majica」のアプリ会員を2026年2月に2,000万人達成としました(同Wikipedia)。トイザらス側の会員・ポイント基盤との統合の可否は、9月29日時点で公式情報がなく未確認です。20年近く続く買収と再編の歩みは、下の年表のとおりです。

PPIH買収・再編の歴史(年表)

年月 出来事とその後
2006年2月 弁当チェーン・オリジン東秀の買収を画策するも、イオンの友好的TOBで断念
2007年1月 DIYのドイトを子会社化(のち2020年2月、ホームセンター事業をコーナン商事へ譲渡)
2007年10月 総合スーパー・長崎屋を子会社化。「ドン・キホーテ」への業態転換で再建した代表例となる
2013年9月 米国のMARUKAI CORPORATION(マルカイ)を子会社化
2017年8月 ユニー・ファミリーマートホールディングスと資本・業務提携
2017年9月 ハワイのスーパーQSI, Inc.(24店舗)を子会社化
2019年1月 ユニーを完全子会社化。「MEGAドン・キホーテUNY」などへの業態転換を推進
2021年4月 カリフォルニアのプレミアムスーパーGelson'sの持株会社GRCY Holdingsを子会社化
2025年8月 カネ美食品を子会社化(議決権40.32%)
2026年7月 Olympicグループを簡易株式交換により完全子会社化(効力発生日7月1日)。ドン・キホーテなどへの転換を計画
2026年9月 トイザらス日本事業の買収が報じられる(9月29日時点で公式発表なし。報道段階)

出典:Wikipedia「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」(2026年9月29日時点の版)、Impress Watch(2026年4月6日付)、共同通信・読売新聞(2026年9月29日配信)。

少子化なのにおもちゃ市場は過去最高——日本市場の異変

「少子化だから、おもちゃなんて売れないはず」——そう思い込んでいる人は少なくないでしょう。しかし、数字はこの常識をきれいに裏切っています。

一般社団法人日本玩具協会が2026年6月25日に公表した2025年度市場規模調査によると、国内玩具市場は1兆1,664億円と過去最高を更新し、2020年度以降6年連続で拡大しています。牽引しているのは子ども向け需要ではなく、大人向けの需要です。トレーディングカードは3,384億円と市場全体の約30%を占め、ポケモンカードゲームやデュエル・マスターズ、遊戯王OCGなどの人気が続いています。ぬいぐるみは前年比138.2%の624億円まで拡大し、プラモデルやフィギュアなどホビーも1,960億円に達しました。「自分のためにおもちゃを買う大人」が市場を支える構造が、すでに定着しているのです。

では、なぜトイザらス日本は最終赤字が続いたのでしょうか。読売新聞は、家電量販店による玩具販売の拡大やネット通販の台頭が業績不振の要因だと報じています。つまり、市場の縮小ではなく、売り場をめぐる競争での敗北です。実際、日本トイザらスの売上高は2018年1月期の約1,395億円から2025年12月期には752億円へと、ほぼ半減しました。おもちゃを買う客は消えていません。家電量販店やECへ流れただけなのです。

ここに、今回の買収の論理が見えてきます(以下は報道情報をもとにした本記事の分析です)。市場は6年連続で拡大し、その主役はトレカやホビーといった、ドンキでも売れ筋と重なるカテゴリーです。成長する市場でチャネル間競争に敗れただけの専門店を、100億円規模と報じられる価格で買い取り、客の動線と品揃えを組み替えれば、奪還できるシェアは十分に残っています。「市場が消えた」のではなく「客が動いた」からこそ、ドンキにとってトイザらスは買う価値のある事業なのです。

店舗・従業員・ポイントへの影響——ここはまだ分からないことだらけ

買収が報じられたいま、多くの読者が気になるのは「近所の店はなくなるのか」「貯めたポイントはどうなるのか」「店で働く人はどうなるのか」という点でしょう。しかし、まさにこの領域こそ、2026年9月30日時点で確定情報が最も少ない部分です。

まず分かっていることから整理します。読売新聞は、PPIHが「店舗や従業員の雇用などを含む国内事業を取得する」と報じており、雇用は引き継がれる見通しです。従業員はアルバイトを含めて約6,000人(日本トイザらス公式サイトによる数字)で、雇用の承継は買収契約の核心とされます。店舗についても、全150店舗をドンキ側が継承する方向が報じられています(共同通信・日本経済新聞)。日経報道では、年内にも撤退が始まる可能性が指摘されています。つまり報道の主眼は「撤退して閉店」ではなく「事業の譲渡」であり、全店継承が実現すれば、当面は同じ場所での営業継続が見込まれます。

また、報道ベースの情報として、当面は「トイザらス」「ベビーザらス」の屋号を維持したうえで、トレーディングカードなど大人向け需要を捉えた新業態への転換や、アピタなどPPIHグループの店舗網への出店も想定される、と伝えられています。ただし、これらはいずれも確定した方針ではありません。

一方、トイザらス・ベビーザらすポイントやdポイント、オンラインストア・アプリの扱い、PPIHの電子マネー「majica」(アプリ会員2,000万人、2026年2月達成)との統合の有無は、いずれも現時点で公式情報がなく未確認です。公正取引委員会の企業結合審査などの手続きが予定されるかどうかも、今回確認できた報道にはなく、未確認です。正式発表を待つ必要があります。

正式発表までの間、次の7点をご自身でも確認しておくと、今後の報道や公式情報を整理しやすくなります。

今後の確認チェックリスト(7項目)

  • 正式発表の内容: PPIH・日本トイザらスの適時開示やプレスリリースで、取得額・対象資産・完了時期が示されるか。「100億円規模」は読売新聞の報道であり、確定額ではない
  • 屋号と改装のスケジュール: 「トイザらス」「ベビーザらス」の屋号維持がいつまでか、大人向け新業態への転換・改装がどの店から進むか
  • 会員・ポイントの扱い: トイザらス・ベビーザらすポイントやdポイント、オンラインストア・アプリが継続利用できるか。過去の個別閉店では「全国店舗とオンラインストアで継続利用可、有効期限は最終購入日から1年」と案内された例がある(NEWS FOREST)
  • majicaとの統合: PPIHの電子マネー「majica」(アプリ会員2,000万人、2026年2月達成)への共通化・相互利用が進むか(現時点で未確認)
  • 雇用の承継方法: アルバイト含む約6,000人の雇用が、どんな形式で引き継がれるか(読売新聞は「雇用などを含む国内事業を取得」と報道)
  • 閉店・移転の有無: 全150店舗継承(共同通信・日本経済新聞の報道)が文字どおり全店なのか、不採算店の扱いはどうか。なお2026年9月30日で営業終了するイオンモール甲府昭和・大和郡山の2店は施設再編による個別案件で、今回の譲渡とは別件(NEWS FOREST)
  • 審査・完了時期: 企業結合審査(独禁法)などの手続きが入るか、買収完了の時期はいつか(いずれも現時点で未確認)

小売再編の行方——ドンキの「昭和の小売博物館」戦略は続く

トイザらス日本の買収報道は、単発のM&Aではなく、いま日本で進む小売再編の一場面として捉えることができます。物価高・人手不足・少子化を背景に小売業の淘汰と統合が進む中、攻めの投資を続けるのがドン・キホーテを中核とするPPIHです。2026年6月期の連結売上高は2兆4,452億円、営業利益は1,748億円。経営体力を備えた総合ディスカウント小売が、苦境に立つ国産小売を次々と吸収する構図が鮮明になっています。

実際、PPIHは2007年に長崎屋を、2019年にユニーを傘下に入れ、いずれも「ドン・キホーテ」への業態転換による再建で知られてきました。2026年7月には食品スーパーのオリンピックを完全子会社化し、9月からは既存店のドン・キホーテなどへの業態転換が始まります。昭和から続く小売企業がディスカウントストアに次々と吸収されていく様は、「昭和の小売博物館」のコレクションがさらに膨らむことにほかなりません。トイザらス買収(報道段階)もまた、この系譜の延長線上にあります。

注目すべきは、敗れたカテゴリーキラー・モデルの着地点が日米で対照的なことです。米国トイザらスは2018年に清算され、ブランドは投資会社WHPグローバルの下でメイシーズ店内の小型店などライセンス展開として残ります。一方の日本では、店舗も雇用も事業ごと売却され、総合ディスカウント小売の内部で生き続ける見通しです。ブランドだけが残る米国と、事業ごと吸収される日本——同じ「おもちゃの巨人」の結末を分けたのは、受け皿となる小売の存在でした。

よくある質問(FAQ)

2026年9月30日時点では正式発表前の報道ベースのため、以下の回答には未確定情報を含みます。確定事項は両社の公式発表をご確認ください。

Q1: トイザらスの店舗はなくなりますか?

国内約150店舗をPPIH(ドン・キホーテ運営)グループが事業ごと引き継ぐ方向と報じられています(共同通信・読売新聞)。報道の主眼は「撤退して閉店」ではなく「事業の譲渡」で、当面は屋号が維持されると伝えられますが、これは未確定情報のため、各店舗の行方は正式発表を待つ必要があります。

Q2: ベビーザらスはどうなりますか?

ベビーザらスも買収対象に含まれると報じられています(読売新聞)。今後の業態や屋号の扱いは確認されておらず、正式発表待ちです。

Q3: トイザらスのポイント・会員はどうなりますか?

2026年9月30日時点で公式情報はありません。現在はトイザらス・ベビーザらすポイントとdポイントが使われていますが、全社譲渡後の取り扱いは公式案内を待つ必要があります。

Q4: なぜ米国のトイザらスは消えたのに日本では残っていたのですか?

米国本体が2017年9月に連邦倒産法第11章の適用を申請した際、日本を含むアジア事業(トイザらス・アジア)は財務再構築の対象外で、財務的に独立した組織として営業を継続していました。加えて、賃貸・ショッピングセンター内出店を中心とする軽めの固定費構造と、縮小していない日本のおもちゃ市場も支えになりました。詳しい構造要因は本文で解説しています。

Q5: ドンキはなぜトイザらスを買収するのですか?

報道ベースの分析では、家族連れ・ベビー需要というドンキが取りにくい客層との接点、全国約150店舗の立地網、トレーディングカードやフィギュアなど玩具・ホビーの品揃え強化が狙いと指摘されています。日本トイザらスは最終赤字が続いており(2025年12月期の最終損失は約37億6千万円)、取得額は100億円規模とみられることから「低価格での事業取得」という見方もあります。買収意図の詳細は正式発表で確認が必要です。

Q6: 買収金額はいくらですか?

読売新聞の報道では、取得額は100億円規模になるとみられます。ただし「関係者によると」の扱いで公式確認はなく、確定額は正式発表待ちです。

Q7: 従業員の雇用は守られますか?

読売新聞は「店舗や従業員の雇用などを含む国内事業を取得する」と報じており、従業員はアルバイトを含め約6,000名です。雇用継続の具体的方法は9月29日時点で公表されておらず、正式発表を待つ必要があります。

Q8: 日本のおもちゃ市場は縮小しているのでは?

むしろ逆です。日本玩具協会の調査では、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の国内玩具市場は前年度比6.3%増の1兆1,664億円で過去最高を更新し、2020年度以降6年連続で拡大しています。成長の中心はカードゲーム・トレーディングカード(3,384億円、市場の約3割)やぬいぐるみ、ホビーなど、大人需要が牽引する品目です。

まとめ

本件の本質は、「消えかけたブランドの店舗網を、成長するディスカウント小売が安く拾う」という日本型小売再編の一例であるという点にあります。米国では2018年に清算・消滅したトイザらスですが、日本では財務的に独立したアジア事業として1991年の1号店開業から35年間店舗を守り続けたものの、売上高は2018年1月期の約1,395億円からほぼ半減し(2025年12月期は752億1,100万円)、最終赤字が続いていました。この「赤字でも残った約150店舗の立地網と接客資産」を、好調なPPIH(2026年6月期・売上高2兆4,452億円、営業利益1,748億円)が100億円規模で引き取る——長崎屋やユニーで実績のある「再編対象の小売を安く買い、ドンキ流に転換する」戦略の延長線上にあるとみられます。

今後の注目ポイントは3つです。

  1. 正式発表の内容: PPIHまたは日本トイザらスの適時開示・プレスリリースで、取得額の確定値、対象資産の範囲、屋号(トイザらス・ベビーザらスの維持か、ドンキ等への業態転換か)、完了時期が明らかになるか。
  2. 審査・手続きの状況: 独禁法(公正取引委員会の企業結合審査)などの手続きが予定されるかどうかは、今回確認した報道には言及がなく未確認です。手続きの有無を含め注視が必要です。
  3. 新業態の中身: トレーディングカードなど大人向け需要を中心とした業態転換や、アピタなどグループ店舗網への展開が観測として語られていますが、具体的な店舗像はまだ何も決まっていません。報道段階の情報として扱う必要があります。

35年間親しまれてきた「おもちゃの巨人」が、成長ディスカウント小売の傘でどう生まれ変わるのか。確定情報が出た際は、両社の公式発表を確認することをおすすめします。

本記事は2026年9月30日朝時点の報道に基づいています。買収の条件・範囲・時期は正式発表で確定するものであり、判明次第更新予定です。

参考文献

  • 共同通信「トイザらス、日本事業撤退 ドンキ買収、国内150店」(Yahoo!ニュース 2026年9月29日22:30配信、2026年9月30日に見出しを直接確認): https://news.yahoo.co.jp/articles/9aa49030678ce04e5801cf7be89f03eb4f4fa9ab
  • 読売新聞「大手玩具専門店『トイザらス』、日本の店舗運営から撤退へ…『ドン・キホーテ』運営会社が事業引き継ぐ見通し」(2026年9月29日、本文は2026年9月30日に直接確認済み): https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260929-GYT1T00511/
  • NEWS FOREST「トイザらス日本撤退、ドンキが全約150店を買収へ 35年の歴史に幕 店舗・ポイントはどうなる」(2026年9月29日): https://forest-life-japan.com/2026/09/29/
  • 日本経済新聞・産経新聞の関連報道(2026年9月29日)
  • 日本玩具協会「玩具市場規模調査」2025年度調査(2026年6月25日公表。本記事の数値は同調査を報じたNEWS FOREST記事経由): https://www.toys.or.jp/
  • Wikipedia「トイザらス」(2026年9月29日時点の版): https://ja.wikipedia.org/wiki/トイザらス
  • Wikipedia「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」(2026年9月29日時点の版): https://ja.wikipedia.org/wiki/パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
  • Impress Watch「スーパー『Olympic』がドン・キホーテなどに転換 PPIHが子会社化」(2026年4月6日): https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2099328.html
  • パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス公式: https://ppih.co.jp/
  • 日本トイザらス 企業情報: https://www.babiesrus.co.jp/ja-jp/corporate.html

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