「ゴジラ・エルニーニョ」とは何か——観測史上最強規模のエルニーニョが日本の2026-27年冬をどう変えるか

はじめに——なぜ今「ゴジラ・エルニーニョ」が話題なのか

2026年10月9日、気象庁が発表した「エルニーニョ監視速報」は衝撃的な内容でした。エルニーニョ監視海域(太平洋赤道域の中部〜東部)の9月の海面水温が平年より +4.0℃高く、1949年以降で最も高かった1997年12月の+3.6℃を超え、気象庁の監視指数で過去最大の強さとなったのです。

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象のこと。数年おきに発生する気象現象ですが、今回の規模は観測史上例がありません。こうした極端に強いエルニーニョに対して欧米メディアが使い始めた異名が「ゴジラ・エルニーニョ」で、日本でも「過去最強のエルニーニョ」と大きく報じられました。気象庁は、今後も冬にかけて過去最大の強さが続く見込みの確率を100%としています。

では、この観測史上最強のエルニーニョは、私たちの2026〜27年冬に何をもたらすのでしょうか。本記事は、気象庁の監視速報と、日本気象協会による寒候季予報の解説(2026年9月18日)をもとに、次の5点をお約束します。

  1. エルニーニョの定義と仕組み——「スーパーエルニーニョ」「ゴジラ」と呼ばれる理由
  2. 観測史上最強の+4.0℃が1997年の記録を塗り替えた意味
  3. 2026-27年冬の日本の予報——暖冬傾向と、一時的な寒波・局地的な「ドカ雪」・南岸低気圧(本州の南岸を進む低気圧)による大雪リスク
  4. 暮らしと経済への影響——光熱費・電力・観光・食料価格
  5. 家庭でできる冬の備えのチェックリスト

「暖冬だから備えは不要」という思い込みは、後述する過去の事例が覆します。なお、本記事の情報は2026年10月9日発表の監視速報と同年9月18日発表の寒候季予報、および2026年10月18日時点の報道に基づくものです。この冬を安心して過ごす手がかりとして、ぜひ最後までお読みください。

(出典: 気象庁エルニーニョ監視速報 2026-10-09、tenki.jp日本気象協会 2026-09-18・10-17)

エルニーニョ現象とは——仕組みと「スーパーエルニーニョ」「ゴジラ」の定義

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です(出典: 気象庁)。数年おき、つまり2〜7年に一度のペースで発生します。海の温度変化が大気の動きを変えるため、地球上のさまざまな地域の天候に連鎖します。

仕組みは「風 → 海面水温 → 対流」の3段階

エルニーニョの発生は、次の3段階で説明されます。

  1. 貿易風が弱まる: 太平洋赤道域ではふだん、東から西へ貿易風が吹き、暖かい海水を西側に集めています。この風が弱まると、西にたまった暖水が東へ流れ返ります。
  2. 冷水の湧き上がりが減る: 南米沿岸では深く冷たい海水が湧き上がっていますが、貿易風の弱まりとともにこの湧昇も弱まり、太平洋の中・東部の海面水温が上昇します。
  3. 対流活動域が東へ移動する: 暖かくなった海の上で積乱雲が活発になり、ふだん西側にある対流の拠点が東へ移動します。ここで放出される熱が大気の大循環を変え、世界の天候に連鎖します。

このように海の変化(エルニーニョ)と大気の変化(南方振動)が一体として連動するしくみは、ENSO(エルニーニョ・南方振動)と呼ばれます(出典: Wikipedia「エルニーニョ・南方振動」)。

graph TD
    A[貿易風が弱まる] --> B[暖水の東進と冷水の湧き上がり減少]
    B --> C[中・東太平洋の海面水温上昇]
    C --> D[対流活動域が東へ移動]
    D --> E[大気の大循環が変化]
    E --> F[世界の天候に連鎖]

名前の由来は「神の御子」

「エルニーニョ(El Niño)」はスペイン語で「神の御子」を意味します。ペルー・エクアドル沖では毎年12月頃のクリスマス時期に海水温が上がることから、現地の漁民がこう呼んだのが起源です(出典: Wikipedia「エルニーニョ・南方振動」)。

「スーパーエルニーニョ」「ゴジラ」は正式用語ではなく俗称

スーパーエルニーニョは正式な気象用語ではなく、エルニーニョ監視海域の海面水温偏差が +2℃を超える非常に強いエルニーニョを指す俗称で、主に気象解説・報道で使われる基準です。この基準では1982-83年、1997-98年、2015-16年の3回が該当します(出典: tenki.jp)。

ゴジラ・エルニーニョは、こうした極端に強いエルニーニョ現象について欧米メディアなどが使い始めた異名です(出典: tenki.jp)。2026年9月の海面水温偏差は+4.0℃に達し、俗称の目安(+2℃超)を大きく上回っています(出典: 気象庁)。

ラニーニャとの対比——真逆の兄弟現象

ラニーニャはエルニーニョと正反対の現象です。貿易風が強まり、中・東太平洋の海面水温が平年より低下します。日本の夏・冬への影響も、おおむねエルニーニョとは逆の傾向になります。

項目 エルニーニョ ラニーニャ
貿易風 弱まる 強まる
中・東太平洋の海面水温 平年より高い 平年より低い
日本への影響 冬は暖冬傾向 エルニーニョと逆の傾向
継続期間 1年程度 2〜3年続くこともある

なお、エルニーニョの翌年はラニーニャへ転じやすいことも知られています(出典: Wikipedia「エルニーニョ・南方振動」)。

観測史上最強の+4.0℃——1997年の記録を塗り替えた意味

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、1年程度続く現象です。その規模を測る数字として、2026年10月9日の気象庁エルニーニョ監視速報(No.409)は衝撃的な値を示しました。

速報No.409の要点——9月の偏差は+4.0℃

9月のエルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度・NINO.3相当)の海面水温偏差は +4.0℃。気象庁の監視指数では1949年以降で最も高かった1997年12月の+3.6℃を超え、同指数で過去最大の強さとなりました。判定に使う5か月移動平均も7月に+2.6℃で、4か月連続で基準値を大きく上回っています(出典: 気象庁エルニーニョ監視速報No.409 2026-10-09)。

観測値・基準 海面水温偏差
今回(2026年9月) +4.0℃(気象庁監視指数で1949年以降最大)
従来の最高(1997年12月) +3.6℃
スーパーエルニーニョの目安(俗称) +2.0℃超
エルニーニョ判定基準(5か月移動平均) +0.5℃以上

エルニーニョの判定基準は「5か月移動平均+0.5℃以上が6か月以上持続」。今回の+4.0℃(月平均偏差)はこの判定基準を大きく上回り、「スーパーエルニーニョ」の目安(+2℃超)も大きく超える値です。

海外機関の診断も強度の持続を示す

見通しについて気象庁は、大気海洋結合モデルの予測として「今後、冬にかけて過去最大の強さのエルニーニョ現象が続く見込み(100%)」と発表しました。海面水温は冬にかけて記録的に高い値で推移する見通しです。米国NOAAの月次ENSO診断(2026年10月8日)は、10〜12月に歴史的な強度となる確率を83%、2027年1〜3月も「強い〜非常に強い」状態が続く確率を83%超としています(出典: NOAA Climate Prediction Center 2026-10-08)。

世界ではエルニーニョ時と一致する天候パターンも

実況でも影響が出ています。海面水温は太平洋赤道域の中部・東部で顕著に高く、貿易風(東風)は「かなり弱い」状態です。世界では、フィリピン南部〜ジャワ島、インド洋〜中部アフリカ北部、ブラジル東部、豪州東部〜南西部で高温、南米南部・ポリネシア南部で低温、アルゼンチン南部で多雨、南米北部・豪州北部〜東南アジア南部で少雨となっており、いずれもエルニーニョ時の特徴と一致しており、気象庁は世界の天候としてエルニーニョの影響と整合するパターンを紹介しています(日本の天候には今回明瞭な特徴が現れなかったとも述べています)。

なぜ「+4.0℃」が重大なのか

海面水温の偏差は1℃でも地球規模の大気の動きを変えるほどのエネルギーを持ちます。過去3回のスーパーエルニーニョ(1982-83年、1997-98年、2015-16年)の年は、世界的な大雨・干ばつなどの異常気象や世界平均気温の上昇と結びついたとされます。その目安を大きく超える+4.0℃の現象がこれから冬本番を迎える——これが「ゴジラ・エルニーニョ」と呼ばれるゆえんであり、日本の2026-27年冬を考えるうえで無視できない数値なのです。

過去のエルニーニョ年と日本の冬——比較表で読む5つの事例

エルニーニョは、太平洋赤道域で海面水温が平年より高くなる現象です。2026年9月には監視海域の水温偏差が+4.0℃に達し、1997年12月の+3.6℃を超える、気象庁の監視指数で過去最大の規模となっています(気象庁監視速報No.409、2026-10-09発表)。では、過去のエルニーニョ年——特に「スーパーエルニーニョ」——の日本の冬と世界は、実際どうだったのでしょうか。主要5事例と今冬(予報)を1つの表にまとめました。

年 NINO.3偏差の最大値 日本の冬の実績 世界の主な被害・経済影響
1972-73 —(資料なし) 暖冬 —
1982-83 —(+2℃超のスーパー級) 並冬(夏は冷夏) 中南米・東南アジア・豪州で豪雨・干ばつ、食料生産に大きな影響(エナリス)
1997-98 +3.6℃(1997年12月・従来の過去最大) 東日本・西日本で大暖冬、北海道は寒冬 経済損失約340億ドルとの推定も(二次資料の整理)。インフラ破壊・農作物激減・エネルギー市場混乱(エナリス)
2015-16 —(+2℃超のスーパー級) 暖冬。ただし2016年1月に関東甲信大雪+北陸大渋滞・九州記録的寒波 東南アジア記録的干ばつ(ベトナム90年最悪・塩害)、国際砂糖価格が2倍近く、パーム油減産(ウェザーニュース)
2023-24 —(エルニーニョ規模) 暖冬傾向。2023年夏は日本+1.76℃の統計開始以来最高の猛暑 パナマ運河の干ばつ通航制限(降水量平年比26%減→36→22隻/日)
2026-27(※予報) +4.0℃(2026年9月実績・気象庁監視指数で1949年以降最大) 【予報値】全国暖冬・日本海側は少雪・太平洋側は降水多め・南岸低気圧の大雪リスク NOAA(2026-10-08診断): 10〜12月に歴史的強度となる確率83%、2027年1〜3月も強〜非常に強い確率83%超

出典: Wikipedia「エルニーニョ・南方振動」年表、エナリス、ウェザーニュース、気象庁エルニーニョ監視速報No.409

※経済損失額・価格変動はいずれも二次資料(エナリス・ウェザーニュース)による整理であり、算定基準・期間は原資料の確認が必要です。

表から読み取れる3つの事実

その1: 強いエルニーニョは世界経済に実損を出し得る。 1997-98年は世界各地でインフラ破壊・農作物激減・エネルギー市場混乱が起こり、二次資料の整理では世界全体の経済損失は約340億ドルとする推定も紹介されています(エナリス)。

その2: 遠くの異常気象が日本の食卓に波及する。 2015-16年は東南アジア全域で記録的干ばつが発生。インド・タイのサトウキビ不作で国際砂糖価格が一時2倍近くに上昇し、インドネシア・マレーシアではパーム油が減産、ベトナムでは過去90年で最悪とされる干ばつと塩害でコーヒー・胡椒が甚大な被害を受けたと報じられました(ウェザーニュース)。

その3: 「エルニーニョ=冷夏」は常識ではなくなった。 2023-24年はエルニーニョ年でありながら、2023年夏の日本の平均気温偏差は+1.76℃と1898年の統計開始以来最高を記録。温暖化の底上げが従来の常識を覆した事例です(エナリス)。

教訓: 「暖冬=無雪」ではない——1998年と2016年1月の二面性

エルニーニョ年の日本の冬は統計上あたたかく出やすく、1997-98年の冬は東日本・西日本で「大暖冬」となりました(一方で北海道は寒冬。地域差・年差もあります)。

しかし暖冬の年こそ、一時的な寒波が甚大化するリスクがあります。2015-16年の冬も基本は暖冬でしたが、2016年1月17-18日の南岸低気圧で関東甲信大雪(河口湖40cm)、1月23-25日の強い冬型では新潟・長岡の中之島で24時間降雪量が観測史上最大の75cmに達し、国道8号で17時間以上の車の立往生「中越大渋滞」が発生。長崎市に観測史上最大17cmの積雪、1月25日頃には全国74地点で最低気温記録が更新され、九州では水道管破裂による大規模断水も起きました(Wikipedia「平成28年の大雪」)。

つまり、エルニーニョ冬の「暖冬」は季節平均の話であり、一時的な寒波・大雪を否定するものではありません。日本海側の少雪が予報される2026-27年冬も、同じ構図で備えるべきでしょう。

なお、表の2026-27年行は2026年10月時点の予報値で、確定した実績ではありません。監視速報は毎月10日頃に更新されるため、最新情報を確認してください。

2026-27年冬の日本の予報——暖冬・寒波・ドカ雪・南岸低気圧

観測史上最強のエルニーニョ(2026年9月・海面水温偏差+4.0℃)を受け、日本気象協会(tenki.jp)は気象庁の寒候季予報をもとに、今冬(12月〜2月)を全国的な暖冬傾向と解説しています。ただし「暖冬=穏やかな冬」ではなく、寒波・ドカ雪・南岸低気圧のリスクにも備える必要があります。

予報の要点——暖冬・太平洋側は降水多め・日本海側は少雪

日本気象協会による寒候季予報の解説(2026-09-18・09-30)で示された12〜2月の見通しです。

地域 気温 降水 降雪
北日本 平年並か高い 太平洋側は平年並か多い 日本海側は平年並か少ない
東日本 平年より高い 太平洋側は平年より多い 日本海側は少ない
西日本 平年より高い 平年より多い 日本海側は少ない
沖縄・奄美 平年より高い 平年より多い —

予報の背景として、①シベリア高気圧がほぼ平年でアリューシャン低気圧が千島付近で弱く、日本では冬型の気圧配置が弱いこと、②フィリピン付近の高気圧の縁を回って南から暖かく湿った空気が流れ込みやすいことの2点が解説されています。太平洋側の「冬晴れ」は例年より少なく、雨や雪の日が多くなりそうです。

月別の見通し——冬の到来は遅く、2月は寒暖差が最大

11月は気温高めの「暖かい秋」で、木枯らしは吹きにくい一方、前線の停滞で曇りや雨が続く期間があります。12〜1月は冬の到来が遅く暖冬傾向ですが、一時的な強い寒気で急激に冷え込むこともあります。2月は気温が高く春の訪れは早いものの、冬の終わりほど寒暖差が大きく、暖かい日が続いた後に厳しい寒さが戻る恐れがあります。

リスク1: 局地的な「ドカ雪」——日本海の高い海面水温が雪雲を発達させる

冬全体の降雪は少ない見込みでも、低気圧通過後に一時的に強い寒気が流れ込むと、海面水温の高い日本海で雪雲が発達し、局地的な「ドカ雪」の可能性があります。特にJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)が発生すると同じ場所に雪が降り続き、大規模な立往生につながる恐れがあります。

リスク2: 南岸低気圧——雪の少ない関東でも大雪に

今冬は南岸低気圧が通りやすく、関東など太平洋側は降水量が平年より多くなる見込みです。コースや気温次第では、普段雪の少ない地域でも大雪になりえます。2014年2月は2週連続の南岸低気圧で関東平野部は30〜80cm、山中湖村は最大187cmの積雪となりました。エルニーニョ冬の2016年1月も南岸低気圧で関東甲信の大雪(河口湖40cm)となり、1月下旬の強い冬型で北陸の国道8号に17時間以上の大規模渋滞が発生。長崎では観測史上最大の17cm、全国74地点で最低気温の記録を更新しました。「暖冬の中の一時的寒波・大雪が甚大化する」という、今冬にも重なるパターンです。

長期予報の限界——「暖冬」でも毎日暖かいわけではない

季節予報はあくまで季節平均の傾向で、毎日暖かいとは限らず、特定の日の気温や大雪を予測するものではありません。週単位・日単位の最新予報をこまめに確認することが何よりの備えになります。

(出典: tenki.jp日本気象協会による寒候季予報の解説 2026-09-18・09-30・10-17)

暖冬が暮らしと経済に与える影響——暖房・電力・観光・食料価格

2026年9月に海面水温偏差+4.0℃と観測史上最大となったエルニーニョを受け、日本気象協会による寒候季予報の解説(9月18日)では、2026-27年冬(12〜2月)は東日本から沖縄・奄美で気温が「平年より高い」見込みとされます。暖冬は暮らしと経済に「得」と「損」の両面をもたらします。分野別に整理します。

エネルギー・光熱費——暖房需要は減るが急変リスク

暖冬になれば暖房需要は減り、家庭のガスや灯油の使用量も抑えられる方向です。ただし冬の終わりほど寒暖差が大きく、一時的な寒波で急激に冷え込む可能性がある点に注意が必要です(日本気象協会)。エナリスは、気温の季節のずれが電力調達コストに直結し、市場連動型契約では寒波等による需給逼迫で調達コストが想定超過に膨らむリスクを指摘しています。事業側にも停電や交通網寸断に備えた事業継続計画(BCP)の確認が求められます。

観光・レジャー——日本海側スキー場は降雪減リスク

寒候季予報の解説では日本海側の降雪量は北日本で平年並か少なく、東日本・西日本で「少ない」予想で、日本海側のスキー場には降雪減の影響が懸念されます。一方、11月は「暖かい秋」となり行楽需要には追い風です。ただし太平洋側は降水量が多く、例年のような「冬晴れ」が少ない見込みで、屋外レジャーは天候リスクを見込んだ計画が大切です。

健康・生活——寒暖差の体調管理と防寒具の確保

2月は暖かい日が続いた後に強い寒気が南下し、厳しい寒さが戻る可能性があります。寒暖差への備えとして、厚手のコートなど防寒具は出番が遅れても冬の後半まで片付けず、日々の気温に合わせた服装調整が推奨されます(日本気象協会)。

食料価格・物流——世界の異常気象が日本の食卓へ

スーパーエルニーニョの年には、世界各地の大雨や干ばつと食料価格への波及が同時に報じられてきました。2015-16年にはインド・タイのサトウキビ不作で国際砂糖価格が一時2倍近くに上昇し、東南アジアの干ばつでパームオイルも減産しました(ウェザーニュース)。2024年にはカカオ先物が4か月で約3倍に高騰し、オリーブ油は日本の家庭用が最大64%値上げされています(エナリス)。物流では、2023年のパナマ運河渇水で通航枠が1日36隻から22隻に制限され、喜望峰迂回で輸送コストが上昇した実績があります。日本は食料を輸入に頼るため、輸入食料・日用品の価格上昇リスクです(エナリス)。

中長期視点——世界の気温上昇と気候レジームシフト

スーパーエルニーニョの年は世界の年平均気温が大きく上昇する傾向が知られています。2025年12月にNature Communicationsへ掲載された研究は、過去3回のスーパーエルニーニョの時期に気温・土壌水分の大きな変化が重なることを示し、長期的な状態変化「気候レジームシフト」の発生確率が高まると指摘しています。今回は1997年12月の+3.6℃を更新する+4.0℃という史上最大規模だけに、中長期的な影響も含めた注視が必要です。

家庭でできる冬の備えチェックリスト

2026-27年冬は、2026年9月にエルニーニョ監視海域の海面水温偏差+4.0℃に達し観測史上最強となったエルニーニョ現象の影響で、全国的に暖冬傾向と予想されています。ただし、季節予報は冬全体の平均的な傾向を示すもので、毎日暖かいわけではありません。同じエルニーニョの冬だった2016年1月には、一時的な寒波により長崎市で観測史上最大の17cmの積雪、国道8号での大規模な立往生、九州各地での水道管破裂による断水が発生しました。また、雪の少ない冬でも、寒波が長く居座ったり日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の発生で同じ場所に雪が降り続いたりすると大規模な立往生が起き得ると、日本気象協会は注意を呼びかけています。「暖冬だから」と備えを先延ばしにしないことが、今冬を安全に暮らすいちばんのポイントです。年末年始の帰省・旅行で雪地域を運転する予定がある人も同じです(台風シーズンの備えは「台風29号コグマ」の備えチェックリストもご参照ください)。次の8項目は、過去事例と気象会社の呼びかけをもとにした一般的な備えの例です。冬道の安全運転や凍結対策の詳細は、国土交通省やお住まいの自治体の呼びかけも参考にしてください。できるものから今日着手してみましょう。

  • [ ] 冬用タイヤの交換を予約する — 日中暖かくても朝晩は路面凍結のおそれがあります。雪予報の後は交換店舗が混み合うため、例年より早めに予約を(tenki.jp備え指針)。
  • [ ] 防寒具を点検し、2月まで片付けない — 今冬は冬の終わりほど寒暖差が大きく、2月に厳しい寒さが戻る可能性があります。暖かい日が続いてもコートや防寒着は手元に残しましょう。
  • [ ] 車の立往生対策を整える — 燃料は早めに補給し、毛布・飲食物・モバイル電源・スコップを車内に常備。2016年1月の中越大渋滞では17時間以上車内に閉じ込められた例があります。
  • [ ] 水道管の凍結対策をする — 露出した配管に断熱材を巻き、寒冷地では水抜きも準備。2016年1月の寒波では九州で水道管が相次いで破裂し、大牟田市などで大規模断水が発生しました。
  • [ ] 太平洋側在住者は雪対応を準備する — 南岸低気圧のコース次第で、普段雪の少ない関東などでも大雪のおそれがあります。融雪剤とスコップを確保し、大雪時の通勤・通学の見合わせ基準を家族で決めておきましょう。
  • [ ] 光熱費を見直す — 暖冬傾向でも急な寒波で需要が急増することがあります。電力・ガスの契約プランを確認し、節電・節油を日ごろから習慣にします。
  • [ ] 食料・日用品をローリングストックする — 過去のスーパーエルニーニョは砂糖の国際価格を一時2倍近くまで押し上げるなど、世界の異常気象が食料価格に波及した実績があります。普段使う品を少し多めに買い、使いながら補充しましょう。
  • [ ] 最新予報を確認する習慣をつける — 週間予報や警報・注意報に加え、エルニーニョ監視速報は毎月10日頃に発表されます。季節予報の更新も月に一度はチェックを。

備えの基本は、特別な買いだめではなく「日常の延長で少しずつ整える」ことです。長期予報は季節全体の平均であり、日々の対応は週間予報と警報・注意報で判断する——この二段構えが今冬を乗り切るコツです。すべてを一度にやる必要はありません。家族で分担し、週末ごとにひとつずつ確認していけば、2月の寒暖差や急な大雪にも落ち着いて対応できます。この記事を読んだ今日、まずは冬用タイヤの交換予約と車内常備品の点検から始めてみてはいかがでしょうか。

(参考: tenki.jp気象予報士コラムの備え指針・気象庁エルニーニョ監視速報/2016年1月「平成28年の大雪」の記録)

よくある質問(FAQ)とまとめ・参考文献

2026年9月のエルニーニョ監視海域の海面水温偏差は+4.0℃に達し、1949年以降で最も高かった1997年12月の+3.6℃を超え、気象庁の監視指数で「通年で過去最大の強さ」となりました(気象庁エルニーニョ監視速報・2026年10月9日発表)。欧米メディアが「ゴジラ・エルニーニョ」と呼ぶこの現象を前に、2026-27年の冬について読者が特に抱きやすい疑問を、FAQ形式でまとめます。

よくある質問(FAQ)

Q: 「ゴジラ・エルニーニョ」は公式な気象用語ですか?

A: いいえ、公式な気象用語ではありません。「ゴジラ・エルニーニョ」は、極端に強いエルニーニョ現象について欧米メディアなどが使い始めた異名(俗称)です。よく耳にする「スーパーエルニーニョ」も正式な気象用語ではなく、海面水温偏差が+2℃を超える非常に強いエルニーニョを指す俗称で、過去に発生したのは1982-83年、1997-98年、2015-16年の3回のみとされます。一方、気象庁は9月の海面水温偏差+4.0℃が1997年12月の+3.6℃を超えた事実をもとに、「過去最大の強さのエルニーニョ現象」と表現しています。呼び名の派手さにとらわれず、気象庁などの一次情報で数値を確認することが大切です。

Q: 今冬(2026-27年)は雪は降らないのですか?

A: そうとは限りません。日本気象協会による寒候季予報の解説(2026年9月18日)では、冬型の気圧配置が弱いとされ、日本海側の降雪量は北日本で平年並か少なく、東日本・西日本で少ない見込みです。ただし、低気圧の通過後に一時的に強い寒気が南下し、海面水温の高い日本海に寒気が流れ込むと雪雲が発達して、局地的な「ドカ雪」となる可能性があります。さらに南岸低気圧が通りやすいため、普段雪の少ない関東など太平洋側でも、低気圧のコースや気温次第では大雪となる恐れがあります。前回のスーパーエルニーニョだった2015-16年の冬も暖冬でしたが、2016年1月には南岸低気圧による関東甲信大雪(河口湖40cm)や、長岡市中之島の24時間降雪量観測史上最大75cmを伴う日本海側の大雪(国道8号中越大渋滞で17時間以上の車内閉じ込め)、長崎市の観測史上最大17cmの積雪が発生しています。暖冬予報だからといって、雪への備えを怠らないことが重要です。

Q: エルニーニョの冬は日本でどうなる?

A: 気象庁の統計(エルニーニョ発生時の冬12〜2月の傾向)では、西日本で気温が「並か高い」傾向にある一方、降水量は東日本太平洋側・沖縄奄美で「多い」傾向、日照時間は西日本太平洋側で「少ない」傾向にあります。つまり統計上は、暖冬で太平洋側は雨や雪が多く日照に乏しい冬になりやすいということです。ただし、これは季節全体の平均的な傾向にすぎません。1997-98年のスーパーエルニーニョでは東日本・西日本の大暖冬(北海道は寒冬)となったのに対し、2015-16年は暖冬の中で2016年1月に74地点で最低気温の記録が更新される記録的寒波・大雪が起こっており、エルニーニョの冬には暖冬と寒波・大雪の二面性があります。

Q: 暖冬で得をするのは誰? 損をするのは誰?

A: 家計にとっては、暖冬で暖房需要が減るため、灯油やガス・電力などの光熱費は減少方向になり、恩恵がある面があります。一方、スキー場など雪を資源とする事業は、日本海側の降雪量が平年より少ない見込みであることから打撃が懸念されます。電力については、暖冬でも一時的な寒波で需要が急変し、市場連動型契約では調達コストが想定を超えて膨らむリスクが指摘されています。また食料品は、エルニーニョに伴う世界の異常気象次第で価格上昇のリスクがあります。過去には2015-16年にインド・タイのサトウキビ不作で国際砂糖価格が一時2倍近くになったほか、2024年にはカカオ先物が4か月で約3倍になるなど、異常気象から日本の食卓への波及は実績済みです。パナマ運河の通航制限(2023年: 1日36隻→22隻)による輸送コスト増も、輸入食料・日用品の価格を押し上げる要因となります。

まとめ

2026年9月に海面水温偏差+4.0℃を記録し、1997年の+3.6℃を更新した観測史上最強のエルニーニョを背景に、2026-27年の冬は全国的に暖冬基調で、本格的な冬の到来は遅れる見込みです。ただし暖冬予報は季節全体の平均的な傾向を示すものであり、冬の終わりほど寒暖差が大きくなる見通しの中で、一時的な寒波による局地的なドカ雪や南岸低気圧による太平洋側の大雪など、「備え不要」では決してありません。長期の平均予報と日々の最新予報の両方を確認し、冬用タイヤの早期交換や防寒具の準備、車内常備品、水道管の凍結対策といった基本的な備えを整えておきましょう。次回の気象庁エルニーニョ監視速報は2026年11月10日14時頃の発表予定なので、発表後には最新の見通しを改めて確認してください。

参考文献

一次情報(政府・気象機関)

準一次・解説記事(気象情報会社・予報士)

経済影響・分析

過去事例(百科事典)