「外国人受け入れ反対」が56.3%に急増——東大調査が映す社会不安の正体

東大社研のパネル調査で、外国人のさらなる受け入れに反対する人が2024年35.6%から2026年56.3%へ20.7ポイント急増。若い世代ほど増加幅が大きく、「社会に希望がない」と感じる人ほど反対に転じやすいという分析結果を読み解きます。

「外国人受け入れ反対」が56.3%に急増——東大調査が映す社会不安の正体

日本に定住しようとする外国人が「もっと増えた方がよい」という意見に反対する人の割合が、2024年の35.6%から2026年には56.3%へ跳ね上がった。東京大学社会科学研究所が2026年8月7日に公表したパネル調査の速報が示した数字だ。わずか2年で20.7ポイント。世論調査の世界で、この幅の変化が2年で起きることは滅多にない。

しかも同じ調査は、この変化を引き起こしたものが外国人の側の事情ではない可能性を示している。反対に転じやすいのは、「日本社会には希望がない」と感じている人だった。つまりこの数字は、日本人が外国人をどう見ているかというより、日本人が自分たちの社会をどう見ているかを映した鏡なのかもしれない。

外国人受け入れ反対が20.7ポイント急増——東大調査が示した数字

今回の調査は、東京大学社会科学研究所が実施する「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」、通称「東大社研パネル調査」の2026年速報である。研究代表は同研究所の有田伸教授。パネル調査とは、同じ回答者を長期にわたって追跡し続ける形式の調査で、有効回答は約3800人とされる。

この形式が持つ意味は小さくない。一般的な世論調査は毎回別の人に聞くため、数字が動いても「回答者の顔ぶれが変わっただけ」という可能性が残る。パネル調査は同じ人に同じ質問を繰り返すので、「一人ひとりの意見が実際に変わった」ことを直接とらえられる。今回の20.7ポイントは、誰かの入れ替わりではなく、同じ人々の考えが2年のあいだに動いた結果である。

質問は「日本に定住しようと思って日本に来る外国人は、もっと増えた方がよい」という意見への賛否を問うもので、同調査ではおおむね2年おきに聞かれてきた。反対の増加は性別・世代を問わず観測されたが、増加幅がとりわけ大きかったのは1987年以降に生まれた層、2026年時点で30代以下にあたる若い世代だった。

「若い世代のほうが多様性に寛容」という通俗的なイメージとは逆方向の結果である。ここは今回の調査でもっとも注意して読むべき部分だろう。

「社会に希望がない」人ほど反対に転じた

研究チームはさらに、どのような人が2024年から2026年にかけて反対へ意識を変えたのかをロジットモデルで分析している。そこで浮かび上がったのが、社会に対する否定的な認識との結びつきだった。

「日本社会には希望がない」「自分の暮らしは親世代より改善していない」「子世代の暮らしも改善しないと思う」——こうした認識を持つ人ほど、2024年時点では反対していなくても2026年には反対に転じやすい傾向が示された。

有田教授は共同通信の取材に対し、「外国人の受け入れに関するネガティブな議論に触れる機会が増え、社会に対する不安や不満に後押しされる形で反対意識が強まったのではないか」とコメントしている。

この構図が正しいとすれば、反対意識の源泉は外国人との個別の接触経験ではなく、自分の生活と社会の先行きに対する不安ということになる。将来への不安が受け皿を探し、外国人受け入れという論点に流れ込んでいる、という読み方だ。ただしこれは調査から導かれた解釈であって、因果関係が実験的に証明されたわけではない点は押さえておきたい。

もう一方の現実——在留外国人412万人と、埋まらない労働力

世論が反対に傾く一方で、実体としての外国人の存在感はむしろ増している。

出入国在留管理庁によれば、2025年末時点の在留外国人数は412万5,395人。前年末から35万6,418人、9.5%増えて過去最高を更新し、初めて400万人を突破した。内訳は中長期在留者が385万8,499人、特別永住者が26万6,896人。国籍・地域別では中国が93万428人、ベトナムが68万1,100人、韓国が40万7,341人と続く。

そして労働力の側からは、正反対の圧力がかかっている。JICAの調査研究による推計では、日本が経済成長を維持しようとした場合の外国人労働者の需給ギャップは、2030年に77万人、2040年に97万人の不足に達するとされる。人手不足はすでに企業の存続を左右する段階に入っており、人材を確保できない事業者の側から見れば、受け入れは理念ではなく事業継続の条件になりつつある。

ただし、この「不足」の見通しは一枚岩ではない。経済産業省が示した2040年の就業構造推計(改訂版)では、AIやロボットの活用が進めば全体として大きな不足は生じないという試算も併存する。外国人労働者にどこまで依存すべきかという問いに、専門家のあいだで確定した答えがあるわけではない。

言い換えれば、世論が「受け入れ反対」に大きく振れたタイミングと、制度と経済が受け入れを前提に動いているタイミングが、正面から食い違っている。

なぜ今、外国人受け入れ反対が広がったのか——争点化と制度の転換点

この2年に何が起きたか。

ひとつは政治の側での争点化である。2025年7月の参議院選挙では「外国人問題」が主要な争点のひとつに浮上した。自民党は「違法外国人ゼロ」を掲げ、外国人による不動産取得の規制強化などを主張。前哨戦となった東京都議会議員選挙で参政党が「日本人ファースト」を掲げて議席を伸ばしたことが、各党の姿勢に影響したと分析されている。政策論争のなかで外国人が繰り返し話題になれば、有田教授の言う「ネガティブな議論に触れる機会」は当然増える。

もうひとつは統計上の事実である。法務省の令和7年版犯罪白書によれば、来日外国人による刑法犯の検挙件数は2005年の3万3,037件をピークに長く減少傾向にあったが、令和5年(2023年)から2年連続で増加に転じた。令和6年(2024年)は1万3,405件で、前年比3,365件、33.5%の増加である。ピーク時の4割程度という水準ではあるものの、増加という方向の変化そのものが体感治安の悪化として受け止められた可能性はある。

制度も転換点にある。長く批判を集めてきた技能実習制度は「育成就労制度」へと改められ、2027年4月の施行が予定されている。特定技能への移行を前提に設計され、一定の条件下で転籍(転職)を認める点が大きな変更だ。労働者としての権利保護と定着を図る改正だが、これは受け入れの縮小ではなく、受け入れを続けることを前提とした制度設計である。

世論が最も厳しくなった時期に、制度は受け入れ継続の方向で動く。この時間差が、今後2年の日本の論争の火種になる。

この先に何が起きるか

短期的に注目すべき点は三つある。

  • 育成就労制度が2027年4月に施行された後、世論がどう反応するか。転籍の自由化は「外国人が来やすくなった」と受け取られる可能性があり、制度の趣旨とは別の次元で反発を招くリスクがある。
  • 政治が世論をどこまで政策に反映させるか。反対が過半数を超えた以上、選挙を意識した政策の引き締めは起こりやすくなる。一方で人手不足は待ってくれない。
  • すでに日本で暮らす412万人への影響。世論の硬化は制度以前に、日常の摩擦や差別として先に現れる。

そして中期的に効いてくるのは、東大社研の分析が示した根の部分だろう。反対の増加が生活不安と結びついているのなら、外国人政策だけを操作しても数字は動かない。実質賃金が上がらず、将来の暮らしが改善する見通しが持てない状況が続くかぎり、不満のはけ口を探す構造そのものは残る。

外国人政策の議論に見えて、実のところ半分は国内の分配と生活実感の議論なのだ、というのが今回の調査から読み取れるいちばん重い含意である。

よくある質問

東大社研パネル調査とは何ですか

東京大学社会科学研究所が実施する「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の通称です。同じ回答者を長期にわたって追跡するパネル形式のため、回答者の入れ替わりではなく個々人の意識変化そのものをとらえられる点が特徴です。今回の2026年速報の有効回答は約3800人、研究代表は同研究所の有田伸教授です。

「反対56.3%」とは具体的に何への反対ですか

「日本に定住しようと思って日本に来る外国人は、もっと増えた方がよい」という意見に対する反対です。定住目的の外国人の受け入れをさらに拡大することへの賛否を問うもので、現在日本にいる外国人の退去を求める意見や、特定の国籍への評価を尋ねたものではありません。

若い世代のほうが反対が増えたのはなぜですか

調査は「1987年以降生まれの層で増加幅が特に大きい」という事実を示していますが、その理由を断定してはいません。研究チームの分析では、世代を問わず「社会に希望がない」といった否定的認識を持つ人ほど反対に転じやすい傾向が確認されており、若年層で生活の先行き不安が強く出ている可能性が考えられます。

在留外国人は今どのくらいいますか

出入国在留管理庁の発表によれば、2025年末時点で412万5,395人です。前年末比35万6,418人(9.5%)の増加で、過去最高を更新し初めて400万人を超えました。国籍・地域別では中国、ベトナム、韓国の順に多くなっています。

育成就労制度はいつから始まりますか

2027年4月の施行が予定されています。技能実習制度を改めたもので、特定技能への移行を前提に設計され、一定の条件下で転籍(転職)を認める点が従来との大きな違いです。

まとめ

2年で20.7ポイントという世論の変化は、それ自体が異例である。だが今回の調査でより重要なのは、変化の中身のほうだ。反対に転じたのは、外国人と衝突した人ではなく、自分の暮らしと社会の先行きに希望を持てなくなった人だった。

在留外国人は412万人を超え、労働力不足の推計は2040年に97万人の不足を示し、制度は2027年4月に受け入れ継続を前提として切り替わる。世論だけが逆を向いている。この乖離をどう扱うかは、外国人政策の巧拙というより、生活不安をどう解消するかという国内政策の問題に帰着する。

数字を「日本人が排外的になった」と読むのは早い。「日本人が自分の将来を信じられなくなった」と読むほうが、今回のデータには忠実である。

参考

参考ソース

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