訪問介護の介護報酬、なぜ「抜本的見直し」が必要なのか——厚労省が検討する背景と「乗り降り方式」の限界、利用者と事業所に何が変わるか

はじめに——なぜ今、訪問介護の報酬が見直されるのか

2026年10月15日午前5時39分、NHKニュースがこんなリードで報じました(NHK「訪問介護の介護報酬の枠組み 抜本的見直しで検討 厚生労働省」)。

訪問介護サービスでは、利用者が分散している場合、ヘルパーの移動に時間がかかるなどして効率的なサービスの提供が難しく、事業者の経営を圧迫する要因となっている

報道の内容は、厚生労働省が訪問介護の介護報酬の枠組みそのものを抜本的に見直す方向で検討している、というものです。報酬の決まり方に関わる基本的なルールが変わる可能性を示す報道ですが、あくまで報道段階の情報でもあります。2026年10月15日時点で、厚労省の公式資料には新しい算定方式の具体案は確認できていません(本記事執筆時点)。本記事では、決定事項と検討中の論点を区別しながら整理します。

実はこの報道、突然降ってわいた話ではありません。同じ10月だけでも、NHKの関連報道が連続しています。

  • 10月8日: 介護団体が、深刻な人手不足や物価高騰による厳しい経営状況を背景に、国への報酬引き上げと人材確保の支援を訴え(NHK記事)
  • 10月9日: 令和9年度(2027年度)の介護報酬改定に向け、厚労省の審議会で本格的な議論が始まったと報じられ(NHK記事)
  • 10月12日: 介護職の給与が他業種と比べ相対的に低い状態が続き、物価高で転職を考え始める職員もいる実態が伝えられました(NHK記事)

介護報酬をめぐる報道が今週相次いでいるのは、こうした流れの表れです。

制度的な背景もあります。介護報酬は原則3年ごとに改定され、直近は2024年度(令和6年度)、次は2027年度(令和9年度)です。2026年秋は、次回改定に向けた審議が進められている時期にあたります。

本記事では、そもそも介護報酬とは何かという基本の仕組みから、現行の算定方式がなぜ「限界」と指摘されるのか、厚労省は具体的に何を議論しているのかを、厚生労働省の公表資料と報道を出典としてひもといていきます。訪問介護を利用中のご家族にも、これから介護に備える人にも、知っておいて損のない内容です。

そもそも介護報酬とは——介護保険の仕組みと資金の流れ

40歳以上全員が加入する社会保険

「介護報酬」を理解するには、その土台となる介護保険制度から押さえておく必要があります。

介護保険は、40歳以上のすべての人が加入する社会保険です。被保険者は次の2つに分かれます(いずれも厚生労働省「介護保険制度の概要」による値)。

  • 第1号被保険者: 65歳以上(3,585万人)
  • 第2号被保険者: 40〜64歳(4,188万人)

各人が保険料を払い、要介護(要支援)認定を受けた人がサービスを利用します。認定者数は681万人で、65歳以上の19.0%にあたります。

制度の運営者(保険者)は市区町村です。利用者が介護サービスを受けると、かかった費用の9割(所得に応じて8割・7割)が介護保険から給付され、残りの1割(所得に応じて2割・3割)を利用者が自己負担します。2割負担は2015年8月から、3割負担は2018年8月から、一定以上の所得の人に適用されています。

一方、サービスを提供する介護事業所は、提供したサービス分を「介護報酬」として保険者に請求し、代金を受け取ります。この報酬は「単位数」で定められ、1単位=10円が目安です。ただし実際の単価は市区町村ごとの地域区分によって上下するため、同じサービスでも地域によって受け取れる額が異なることがあります。

介護保険のお金の流れを図にまとめると、次のようになります。

flowchart LR
  A["第1号被保険者(65歳以上)<br/>3,585万人・保険料23%"] --> E["市区町村(保険者)"]
  B["第2号被保険者(40〜64歳)<br/>4,188万人・保険料27%"] --> E
  C["税金(公費50%)<br/>国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%"] --> E
  E -- "介護報酬(単位数×単価、費用の9割)" --> F["介護サービス事業所"]
  G["利用者(要介護認定者)"] -- "1〜3割の自己負担" --> F
  G -- "ケアプランに基づき利用" --> F
  F -- "訪問介護なら自宅へヘルパー派遣" --> G

財源は「公費50%・保険料50%」

では、介護保険を支えるお金はどこから来ているのでしょうか。令和7年度予算では、公費(税金)50%・保険料50%という構成です。

財源 内訳 割合(令和7年度)
公費 国(定率分20%+調整交付金5%) 25%(3.1兆円)
公費 都道府県 12.5%(1.9兆円)
公費 市町村 12.5%(1.7兆円)
保険料 第1号保険料(65歳以上) 23%(3.0兆円)
保険料 第2号保険料(40〜64歳) 27%(3.6兆円)

(出典: 厚生労働省 「介護保険制度の概要」。※施設等給付は国20%・都道府県17.5%と異なる負担割合)

令和7年度の介護給付費は13.2兆円(総費用ベースでは14.3兆円)にのぼります(同資料)。この巨大なパイをサービスごとにどう配分するかのルールこそが「介護報酬」なのです。

3年ごとに改定される報酬

介護報酬は、物価や人件費の動向、制度を取り巻く環境の変化を反映して3年ごとに改定されます。直近は2024年度(令和6年度)、次回は2027年度(令和9年度)。次章以降で見るように、この次回改定に向けて、訪問介護の報酬の枠組みを抜本的に見直す議論が報じられているのが現状です。

訪問介護の報酬は今どう決まっているか——「乗り降り方式」の限界

訪問介護の3類型

訪問介護は、ヘルパーが利用者の自宅を訪れて支援するサービスです。報酬上は次の3つに分かれています。

  • 身体介護: 入浴・排せつ・食事の介助など、身体に直接触れるサービス
  • 生活援助: 掃除・洗濯・調理などの家事援助
  • 通院等乗降介助: 通院などのための乗車・降車の介助

「1回の訪問」と「訪問先での時間」で決まる報酬

現行の報酬は、1回の訪問ごとに、訪問先で過ごしたサービス提供時間の区分で単位数が決まります。

類型 時間区分 単位数(1回あたり)
身体介護中心型 20分未満 163単位
身体介護中心型 20分以上30分未満 244単位
身体介護中心型 30分以上1時間未満 387単位
身体介護中心型 1時間以上 567単位+30分増すごとに82単位
生活援助中心型 20分以上45分未満 179単位
生活援助中心型 45分以上 220単位
身体介護に引き続く生活援助 20分/45分/70分以上 65/130/195単位
通院等乗降介助 片道 97単位

(出典: 厚生労働省 第259回介護給付費分科会 資料1「訪問介護」)

さらに時間帯や事業所の体制で加算・減算が重なります。たとえば夜間(18〜22時)・早朝(6〜8時)は25%加算、深夜(22〜6時)は50%加算。事業所の体制に応じる特定事業所加算(Ⅰ〜Ⅴ)は所定単位数の20%〜3%です。一方、同一の建物に住む利用者へのサービス提供には▲10〜15%程度の減算が設けられています(いずれも同資料)。

実態としては、令和7年3月のサービス提供分で、回数ベースの76.7%が身体介護(生活援助は10.4%)と、身体介護が大半を占めています(同資料の算定状況集計)。

いわゆる「乗り降り方式」——移動時間が報酬にならない構造

報道で「乗り降り方式」と呼ばれるのが、この現行の算定構造です。ヘルパーが利用者宅に「乗り込んで」から「降りる」まで——つまり訪問先で過ごした時間だけが報酬の対象になる、というイメージの呼び方です。

ただし注意したいのは、この呼称が厚労省の公式資料には確認できない、報道由来の表現だということです。本記事では「いわゆる『乗り降り方式』」と断った上で、「訪問1回ごと・訪問先でのサービス提供時間で単位数が決まる現行方式」の意味で使います。

この構造の弱点として指摘されるのが、利用者宅の間を移動する時間が原則として報酬にならないことです。厚労省の調査(第259回分科会資料1・訪問介護事業所アンケート)によると、1回あたりの平均移動時間は次のとおりです。

区分 1回あたり平均移動時間
中山間・離島等地域 21.6分
都市部 24.6分
同一建物減算の算定がない場合 いずれの地域も30分弱

(出典: 厚生労働省 第259回介護給付費分科会 資料1「訪問介護」)

地域差はあるものの、1回の移動に20分以上かかるのが実態で、場合によっては30分近くに及びます。利用者が点在すれば移動時間は膨らみ、1日に回れる訪問件数は減りがちです。1回ごとに報酬が決まる仕組みでは、訪問件数の減少は事業所の収入減につながりうる構造です。ただし、事業所の経営環境には人員不足など複数の要因が絡んでおり(後述)、移動時間だけが原因とまでは言えない点に注意が必要です。

10月15日のNHK報道が「利用者が分散している場合、ヘルパーの移動に時間がかかるなどして効率的なサービスの提供が難しく、事業者の経営を圧迫する要因」と報じたのは、この構造をめぐる指摘です。

多様化するニーズとのミスマッチ

もう一つの限界は、需要の多様化です。短時間・高頻度での利用や、重症度に応じた柔軟な対応など、利用ニーズが多様化する中、時間区分で区切る現行の報酬体系が実態に合わなくなっていることが、第259回分科会資料の需要データや審議報告でも指摘されています。次章で見るように、厚労省が「抜本的見直し」を検討するのは、こうした構造問題に個別の加算で場当たり的に対応するのではなく、枠組み自体を見直す必要が審議の中で認識されてきたためです。

厚労省の検討内容——「抜本的見直し」で何が議論されているのか

審議の場は「介護給付費分科会」

令和9年度介護報酬改定を審議しているのは、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会です。2026年4月以降、各サービスや横断的課題について計9回の審議が行われ、関係団体との意見交換会も3回開かれています(分科会開催状況による)。

ここまでの流れを整理すると次のとおりです。

開催日 会合 主な内容
6月29日 第259回 訪問介護・訪問入浴・訪問看護などの実態データを提示
8月5日 第262回 定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護など
9月30日 第268回 「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」を提示
10月9日 第269回 定期巡回・小規模多機能型など
10月14日 第270回 通所系・短期入所系

(出典: 厚生労働省 介護給付費分科会 開催状況・資料一覧)

6月29日の第259回では、前章で見た訪問介護の実態データ(移動時間、算定状況、経営状況など)が提示されました。9月30日の第268回では、改定全体の方向性を示す「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」が提示されています。10月15日のNHK報道は、この第270回の直後のタイミングでした。

「基本的な視点(案)」が示す5つの視点

視点(案)は、改定に向けた議論の土台となる次の5つの視点を示しています。

  1. 物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善 — 「他職種と遜色のない処遇改善」を掲げる
  2. 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
  3. 地域包括ケアシステムの深化 — 医療介護連携・認知症・独居高齢者への対応
  4. 職場環境の改善と生産性の向上を通じたサービスの質の向上及び介護人材の確保
  5. 制度の安定性・持続可能性の確保 — 「報酬の評価の適正化・重点化」「報酬体系の整理・簡素化」

(出典: 厚生労働省 第268回介護給付費分科会 資料1「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」)

背景には厳しい経営実態があります。令和7年度介護事業経営概況調査(第259回分科会資料1で引用)では、全サービスの赤字事業者割合が約4割に達しています。また、2040年に向けた85歳以上人口の増加と、地域による需要増減の分化も見据えられています(同資料)。

同時に、報酬引き上げの裏返しとして、保険料負担増への懸念(特に現役世代)にも配慮が必要との基本認識も示されています(同資料)。公費50%・保険料50%の財源構造である以上、報酬水準の引き上げは保険料や公費負担との整合が常に問われるのです。

具体的な算定案は「これから」

注意したいのは、2026年10月15日時点で、厚労省の公式資料には訪問介護の新しい算定方式の具体案は確認できていないことです(本記事執筆時点。NHK報道の内容は報道ベースの情報として扱っています)。現時点で公式資料から確実に言えるのは、改定に向けた5つの視点が示され、訪問介護を含む各サービスの実態データが審議資料として提示されていること、そして結論は2027年度(令和9年度)施行の改定に反映される見通しであること、までです。本記事でも、確定情報が出るまでは断定を避け、続報の確認をおすすめします。

現場の実態——人手不足・事業所の休止・廃止と経営環境

こうした構造問題は、すでに現場の数字にも表れています。なお、以下の統計はいずれも厚生労働省第259回分科会資料1「訪問介護」(令和7年度介護事業経営概況調査・自治体・事業所アンケートに基づく)からの引用です。

まず経営です。訪問介護の収支差率(税引前・補助金を除く)は令和3年度5.8%→令和4年度7.8%→令和5年度11.1%と推移し、直近の令和6年度は9.6%へと悪化に転じました。金額ベースでは1事業所あたり月にして約31.6万円の黒字に相当し、収益の余地は限り始めています。

撤退の動きも報告されています。令和6年6〜8月の3か月間に訪問介護を休止・廃止した事業所は、前年同期と比べておおよそ1割増加。内訳を見ると、中山間・離島が全域の都道府県では微増にとどまる一方、それ以外の都道府県では概ね2割増と、市街地での休止・廃止が目立つ結果となっています。

自治体へのアンケート(第259回資料)では、休止・廃止の理由として最も多かったのは「人員の不足」の255件。「経営戦略上の事業所の統廃合」が78件、「介護報酬改定に伴う収入減」は7件でした。報酬そのものが直接の引き金になるケースは少なく、まず「人が集まらない」ことこそが事業継続の壁になっている実態がうかがえます。

人材面でも同じ傾向が裏付けられます。同じく自治体アンケートでは、66.1%が「介護人材が不足している」と回答し、39.3%が「訪問介護事業所数が十分でない」と答えました。訪問介護事業所自身へのアンケートでも、職員の充足状況は全ての地域で「不足」の割合が高く、特に都市部で顕著です。人材確保の課題はいずれの地域も「応募者が少ない」が最多でした。

就労する側の事情も指摘されています。令和5年12月の審議報告は「訪問介護員等の人材不足は喫緊の課題」と明記し、1人で利用者宅を訪問することへの不安が就労希望者の減少につながっている点を指摘しています。さらにNHKの報道(10月12日)では、介護職の給与が他業種より相対的に低く、物価高の中で転職を考える職員もいる実態が伝えられました。

一方、需要は減るどころか増え続けます。第9期介護保険事業計画に基づく推計(第259回分科会資料1で引用)では、ホームヘルプサービスの利用者は2023年度(令和5年度)の121万人から、2040年(令和22年度)には151万人と約25%増える見通しです。事業所の総数自体は平成25年の30,272か所から令和7年には35,497か所へと増えてはいるものの、地域によって休止・廃止が進めば、需要と供給のギャップが広がることが懸念されます。

利用者と事業所に何が変わるのか

ここで最も大切な前提を確認しておきます。2026年10月15日時点で、見直しの具体案はまだ審議中(報道段階の情報を含む)です。したがって本稿で示せるのは「影響の可能性」の整理であり、確定していることとは分けてお読みいただく必要があります。

視点 現時点で言えること 今後の審議で決まること
事業所 現行算定では移動時間や分散地域の評価が低く、経営に影響しているとの指摘がある 移動時間の評価方法、報酬の算定単位そのもの
利用者 自己負担割合(1〜3割)の制度は今回の算定見直しとは別枠 算定単位の変更によるサービスの組み合わせや提供時間の切り方
財源・負担 介護報酬の財源は公費50%・保険料50% 報酬水準と保険料・公費負担の整合

事業所にとっては、移動時間や分散地域の評価が変われば、これまで採算が合わなかった地域・時間帯・短時間のサービス提供がしやすくなる可能性があります。そして事業所の経営が安定することは、利用者にとっては「サービスの維持と選択肢の確保」に直結します。休止・廃止が進めば、利用する側がサービスを失うリスクが高まりうると懸念されています。

利用者側の負担については、混同しやすい点に注意が必要です。介護報酬の算定方式は国が事業者に支払うルールの話であり、利用者の自己負担割合(1〜3割)は別の制度論点です。ただし、算定単位が変わればサービスの組み合わせや提供時間の切り方が変わり、結果として月額の自己負担額が変わる可能性はあります。

もう一つ忘れてはならないのが財源です。介護報酬の財源構造は公費50%・保険料50%。報酬水準の引き上げは、その裏返しとして保険料や公費負担との整合が常に議論されます。特に現役世代の保険料負担増への懸念が、議論の背景にある点も押さえておきたいところです。

正直に申し上げれば、2026年10月時点で「何がどう変わるか」を断定できる材料はまだそろっていません。だからこそ本稿では、確定していることと審議中であることを分けて整理しました。この姿勢は、今後の報道や厚生労働省の資料を読み解く際にも役立つはずです。

よくある質問(FAQ)

質問:介護報酬の見直しで、利用者の自己負担はすぐ増えますか?

いえ、すぐに増えるわけではありません。報酬の算定方式の見直しは、国が事業者に支払うルールの話であり、利用者の負担割合(1〜3割)は別の制度論点です。ただし、算定単位の変更によってサービスの提供時間や回数の組み合わせが変われば、月額の自己負担額が変わる可能性はあります。具体案は現在審議中です。

質問:「乗り降り方式」とは何ですか?

ヘルパーが利用者宅など訪問先に滞在したサービス提供時間だけで報酬単位数が決まる、現行の時間区分型の算定方式を指す、報道側の呼び方です。利用者間の移動時間は原則として報酬対象にならず、この点が利用者の分散する地域での経営課題の一因として指摘されています。

質問:介護報酬はいつから変わりますか?

介護報酬は3年ごとに改定され、次回は令和9年度(2027年度)です。2026年10月現在、社会保障審議会の介護給付費分科会で審議が進められています。

質問:訪問介護を利用中ですが、事業所が撤退したらどうすればよいですか?

まず担当のケアマネジャー(居宅介護支援事業者)に相談しましょう。代替事業所の紹介や、市区町村の地域包括支援センターへの相談が可能です。なお、休止・廃止の最多理由は人員の不足です(第259回分科会資料1の自治体アンケート)。

質問:なぜヘルパーの移動時間がこれほど問題なのですか?

第259回分科会資料1の調査では、1回あたりの平均移動時間は中山間地域等で21.6分、都市部でも24.6分とされています。移動時間は報酬にならず、利用者が点在するほど1日に回れる訪問件数が減りがちです。その結果、事業所の収入やヘルパーの働き方を圧迫するとの指摘があります。

まとめ——読者が次にやるべきアクション

訪問介護の報酬をめぐる問題の核心は、シンプルに言えば「訪問先で過ごした時間」だけが報酬になる構造と、利用者の分散・ニーズの多様化という現実とのミスマッチです。移動時間が報酬にならない構造、人材不足、事業所の休止・廃止の動き、そして2040年に向けた需要増——こうした要素が重なるねじれが、制度の持続可能性の観点から懸念として指摘されています。

厚生労働省は令和9年度(2027年度)改定に向け、処遇改善、人口減少・需要変化に応じた提供体制の構築、制度の安定性・持続可能性の確保といった5つの視点から抜本的な見直しを審議しています(2026年10月時点。公式資料で確認できる範囲)。訪問介護の報酬枠組みそのものに踏み込む議論は、今後の分科会で本格化する見通しです。

この問題は、読者自身の老後にも直結します。今日からできることを3つ挙げます。

  1. 訪問介護を利用中・利用予定のご家族がいる場合:担当のケアマネジャーと、お住まいの市区町村の地域包括支援センターの連絡先を、今のうちに確認しておく
  2. 自分の市区町村の介護保険料(第1号保険料)と、地域のサービス提供の状況に軽く目を通しておく
  3. 改定の行方を追うなら、厚生労働省の介護給付費分科会のページで最新資料をチェックする(URLは文末の参考文献にまとめています)

制度の大きな転換点は、専門家だけのものではありません。利用者・事業者・保険料を払う私たち一人ひとりの暮らしに影響します。今後の議論を、ぜひ自分ごととして追いかけてみてください。

参考文献

  1. NHKニュース「訪問介護の介護報酬の枠組み 抜本的見直しで検討 厚生労働省」(2026年10月15日)— https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261015de59521
  2. NHKニュース「介護団体が事業所の経営環境改善へ 介護報酬引き上げなど訴え」(2026年10月8日)— https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261008de56202
  3. NHKニュース「介護報酬改定に向けて議論本格化 処遇の改善などが課題」(2026年10月9日)— https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261009de57454
  4. NHKニュース「介護報酬改定の議論本格化 物価高で相対的に低い介護職の給与 担い手不足と処遇改善どうなる?」(2026年10月12日)— https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261012de58129
  5. 厚生労働省 第259回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1「訪問介護」(2026年6月29日)— https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716093.pdf
  6. 厚生労働省 第259回介護給付費分科会 資料一覧 — https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74005.html
  7. 厚生労働省 第268回介護給付費分科会 資料1「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」(2026年9月30日)— https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001753962.pdf
  8. 厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会)開催状況・資料一覧 — https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosyo_126698_00022.html
  9. 厚生労働省「介護保険制度の概要」(PDF) — https://www.mhlw.go.jp/content/001512842.pdf
  10. 厚生労働省 介護保険制度の概要ページ — https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

※統計数値(収支差率・休止廃止件数・移動時間・需要推計等)は、特に断りのない限り第259回分科会資料1「訪問介護」に基づきます。制度全体の数値(被保険者数・財源構成等)は「介護保険制度の概要」に基づきます。

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