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暮らし・文化

電動車いすの転落死亡事故が10年間で34件——NITE注意喚起の背景と、家族が今日からできる安全チェックリスト

はじめに——敬老の日前日にNITEが注意喚起、10年で死亡34件の衝撃 結論から先にお伝えします。製品評価技術基盤機構(NITE)の集計では、電動車いすの事故の約8割は製品の不具合以外によるものです。このためNITEは、乗車前の確認と点検、走行ルートの見直しといった使用環境・使用方法の確認を、使用者と家族・介助者が一緒に行うことを呼びかけています。 2026年9月20日、NHKは「電動車いすが用水路や側溝に転落するなどして、乗っていた高齢者が死亡する事故が過去10年間で34件」と報じ、注意を呼びかけるNITEの発信を伝えました。NITEは9月17日、9月21日の敬老の日に合わせて「敬老の日に願い、届ける、安全なくらし」と題する注意喚起を発表しています。なお死亡事故の「34件」はNHKの報道による数字で、NITE資料では同期間(2016〜2025年)の電動車いす関連事故全体を「59件」と集計しており、ほぼ毎年死亡事故が確認され、死亡・重傷に至る割合が高いことが指摘されています。 敬老の日は、内閣府の国民の祝日法の解説によれば「多年にわたり社会をつくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」
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サイバーセキュリティ

耐量子暗号移行入門——「盗んでおいて後で解読する」攻撃からデータを守るPQCの仕組みと2026年の移行リアリティ

はじめに: 量子コンピュータが来る前に、盗みはもう始まっている 「量子コンピュータが実用化されればRSA暗号が破られる」——この話は耳にタコができるほど聞いてきた、という方も多いでしょう。1994年にPeter Shorが発表した量子アルゴリズムは、素因数分解と離散対数問題を多項式時間で解け、RSA・ECC・DHといった現行の公開鍵暗号を一挙に無力化します。ただし、それが可能な「暗号学的に意味のある量子コンピュータ(CRQC)」はまだ実現していません。だから安全、と言いたいところですが、実はその考えこそが最大の落とし穴です。 本当の脅威は、すでに進行中です。それが「Harvest Now, Decrypt Later(HNDL:今盗み、後で解読)」攻撃です。攻撃者は今日の時点で、暗号化された通信やデータをこっそり盗み出して蓄積しておきます。そして将来CRQCが手に入った時点で、Shorのアルゴリズムを使って一気に復号するのです。暗号化されたトラフィックの盗聴は、量子コンピュータがなくても今日から可能です。つまり攻撃の「準備」はすでに始まっていて、被害だけが未来に先送りされているので
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防災・災害

台風25号(ドゥージェン)関東接近——シルバーウィーク直前、なぜ「秋雨前線との重なり」が記録的大雨のリスクを高めるのか

本記事の基準時刻:2026年9月19日(土)07:00公開。台風の進路・数値は、気象庁が同日06:45に発表した台風情報(tenki.jp掲載)に基づきます[1]。予報は今後変わるため、行動の前に気象庁・交通機関の最新情報をご確認ください[9]。 はじめに 結論から先に。「連休前半の土日(19日〜20日)のうちに備えを済ませ、20日(日)夜〜21日(月)朝の行動計画を見直すこと」がいちばん大事です。 2026年9月19日(土)、関東は5連休のシルバーウィーク(19日〜23日。敬老の日21日・秋分の日23日を含む[11])の初日を迎えました。行楽や帰省の計画を楽しみにしていた方も多いはずです。ところが気象庁の19日06:45発表の進路予想[1]では、台風25号(ドゥージェン)が20日(日)〜21日(月・
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サイバーセキュリティ

「リトライストーム」はなぜ起きるのか——Uberが本番障害から学んだマイクロサービスの連鎖停止とその防ぎ方

はじめに: 「再試行」がシステムを殺すとき 「一時的なエラーなら、リトライ(再試行)すればいい」。分散システムを設計したことがある人なら、誰しも一度はこう考えたことがあるはずです。実際、AWSのアーキテクチャガイドでも、一時的な障害に対するバックオフ付きリトライはベストプラクティスとされています。しかし、この「リトライは善」という常識は、システムが劣化した瞬間に崩れ落ちます。 2026年9月17日、Uberがエンジニアリングブログ「How Uber Protects Against Retry Storms」を公開し、Hacker Newsでも話題になりました。テーマは「リトライストーム」——再試行の連鎖が嵐のようにシステム全体を飲み込み、単一サービスの軽微な劣化がプラットフォーム全体の停止にまで拡大する現象です。 Uberはこの記事で、2025年11月18日に実際に起きた大規模障害を振り返っています。コールチェーンの5階層以降にあったCore Entityサービスがインフラ障害で高エラー率になると、エラーは上位サービスへ急速に伝播。もし従来のリトライバジェット運用のままなら、劣
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国際・地政学

なぜ日本はジャガイモの輸入を解禁しないのか——アメリカの解禁要求と「検疫の壁」、ポテトチップスへの影響をわかりやすく解説

はじめに:ポテトチップスの向こうに見える「検疫の壁」 2026年9月18日、NHKの報道によって、日米間で静かに進められてきた交渉の内側が明らかになりました。アメリカが全面的な輸入解禁を求めている生のジャガイモをめぐり、農林水産省の幹部が、アメリカの関係当局から解禁に向けた手続きの加速を改めて要求されていたのです。これに対し日本政府は、あくまで科学的な手続きを通じて対応する方針を示しています。 肉じゃが、ポテトサラダ、カレー、そしてポテトチップス——ジャガイモは日本人の食卓に最も身近な野菜のひとつです。ところが、アメリカ産の生ジャガイモは、ポテトチップスの加工用の一部を除いて、これまで原則として輸入が認められてきませんでした。その壁の正体は、関税でも貿易交渉でもなく、病害虫の国内侵入を防ぐための「植物検疫」です。 実は、この問題をめぐる手続きは今、大きく動いています。報道によると、農林水産省は2026年8月28日、病害虫のリスク評価結果を取りまとめ、アメリカ側と検疫措置の協議が必要な病害虫として「21種」を特定しました。鈴木憲和農林水産大臣は「侵入は許さないとの強い決意のもとで、
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ロボティクス

IMUとセンサーフュージョン入門——加速度・ジャイロ・地磁気を統合して姿勢推定する仕組み(相補フィルタから拡張カルマンフィルタまで)

はじめに——スマホはどうやって「自分の傾き」を知っているのか スマートフォンの画面が端末の傾きに合わせて自動で回転する。ドローンが風に煽られても水平を保ち続ける。ロボット掃除機が自分の向いている方角を把握しながら部屋を走る。これらの裏には、共通する小さなセンサの働きがあります。それがIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)です(本記事では、厳密にはIMU=加速度計+ジャイロ、磁力計を加えたものは9軸IMU/MARGと区別して扱います。詳しくは次節)。 しかし、ここで不思議に思いませんか。スマホの中の加速度計は「どちらが下か」しか分からず、ジャイロスコープは「今どれだけ回っているか」しか測れない。どちらの単体データからも「端末が今、世界の中でどの方向を向いているか(姿勢)」は直接得られないのです。それを可能にするのがセンサーフュージョン——複数センサの情報を統合して、どの単一センサよりも優れた推定値を導く技術です。 本記事では、これら3種類のセンサ(加速度計・ジャイロスコープ・磁力計)の原理から、相補フィルタ、Madgwick/Mahonyフィ
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政治・社会

ジェンダーギャップ指数2026で日本は145カ国中117位――順位の測り方、「政治参加」の壁、そして日本が伸び悩む本当の理由をわかりやすく解説

1. はじめに――世界経済フォーラムが2026年版を発表 2026年9月16日、世界経済フォーラム(WEF)が各国の男女差の大きさを測定する報告書「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2026年版」を発表しました(発表日はWEF公式ページで確認済み)。WEF自身が「第20版(The 20th edition)」と記す通り、2006年の第1版から20年間にわたり一貫した手法で計測が続けられてきた節目の版です。この中で、日本は調査対象145カ国中117位という結果が示されました(時事通信・共同通信・朝日新聞など複数の報道による伝達。145カ国・117位という数値は本稿執筆時点で国内報道に基づくもので、WEF公式の国別表では未確認です)。 前年からの改善は「1位だけ」 項目 2025年版(前年) 2026年版(今回) 出典 対象国数 148カ国 145カ国 報道(朝日新聞ほか) 日本の総合順位 118位 117位 報道(時事・共同・朝日・ABEMA) 順位の動き ― 1位改善
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OS

eBPF入門——カーネルを書き換えずにLinuxの仕組みを変える技術はどう動くのか

はじめに——カーネルを変えるにはなぜ難しいのか? 「Linuxの仕組みそのものを変えたい」と思ったら、どうすればいいでしょうか。たとえば、特定のシステムコールを監視したい、カーネルのネットワーク処理に独自の処理を組み込みたい——そんなとき、カーネル内部に新しい処理を追加する代表的な方法は事実上2つでした(ebpf.io)。 1つ目はカーネルソースの変更です。カーネルはシステム全体を制御する特権的な存在であるがゆえに安定性・セキュリティ要件が厳しく、変更はコミュニティの合意を経てメインラインにマージされ、各ディストリビューションへ普及するまで長い時間がかかります。 2つ目はカーネルモジュールの自作です。こちらは即座に反映できますが、セキュリティ境界のない状態でカーネル空間にコードをロードするため、バグひとつでカーネルごとクラッシュする危険を伴い、カーネル更新のたびに破損リスクと隣り合わせになります(ebpf.io)。 「待つか、危険を冒すか」。カーネル内部に新しい処理を加える方法としては、この2択に_flock_してきました。そして、第3の選択肢として登場したのが eBPF(ex
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暮らし・文化

地価が全国で5年連続上昇——2026年基準地価の読み方と、あなたの街の地価を無料で調べる方法

はじめに——地価5年連続上昇って、あなたの街ではどう? 2026年9月15日、国土交通省は2026年基準地価(令和8年都道府県地価調査)を公表しました。価格時点は2026年7月1日。全国47都道府県の計21,466地点(宅地21,050地点+林地416地点)を対象に、不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて都道府県知事が正常価格を判定する調査です。 その結果、全国の地価(全用途平均)は前年比+1.5%となり、5年連続の上昇を記録しました。用途別では住宅地+1.0%、宅地見込地+0.4%、商業地+2.9%、工業地+3.3%と、すべての用途でプラス。NHKは「住宅地商業地とも需要堅調の中で」の上昇と報じています(出典: https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20260915de50254 / 国土交通省「令和8年都道府県地価調査の実施状況及び地価の状況」
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AI・テクノロジー

RISC-Vベクトル拡張で私のホームサーバーはどう変わる?——RVV 1.0対応チップが開く省電力セルフホスティングの現実解

はじめに 電気代の高騰が続くなか、ホームサーバーの運用費を見直している方は少なくないでしょう。24時間365日動かすサーバーでは、数ワットの差が年間の電気代に確実に響きます。かといってx86ミニPCは柔軟性が高いぶん消費電力が気になり、ラズパイに代表されるArmボードは成熟しているものの「第三の選択肢」を求める声も聞こえます。 そんな中、注目したいのがオープンなISA(命令セットアーキテクチャ)であるRISC-Vの動きです。とくに2026年時点では、ベクトル拡張「RVV 1.0」に対応したチップがついに実際に買える段階に入りました。SpacemiT K1搭載のBanana Pi BPI-F3など、ラズパイと同等の価格帯で入手できるシングルボードコンピュータが登場しています(価格はメモリ構成・販売店・為替で変動するため、購入時に公式販売ページで確認してください)。K1は8コアでCPU内に2.0 TOPSのAI演算力を統合し、単コア性能もCortex-A55の約1.3倍と公称されます。 さらにエコシステム側も変わりつつあります。Ubuntu 25.10では要求ISAプロファイルがRV
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政治・社会

交通事故の「魔の7歳」とは何か——7歳前後に事故が集中する理由と、家族が今日からできる予防策を解説

はじめに——「魔の7歳」警鐘のニュースとは何だったのか 2026年9月14日、Yahoo!ニュースのトピックス(pickup)に「交通事故『魔の7歳』巡り識者警鐘」という見出しが登場し、子を持つ保護者の間で注目を集めました(Yahoo!ニュース Pickup)。元となったのは中国放送(RCC/TBS NEWS DIG)の報道「【魔の7歳】事故リスク最大“新1年生”の命守る『予測運転』 生死分ける『30km/hの壁』」(2026年4月9日公開・6月7日更新)で、広島県警の識者がドライバーに向けた警鐘を発したものです(RCC中国放送/TBS NEWS DIG)。 ここでいう「魔の7歳」とは、学術用語ではなく、交通事故に遭う子どもが7歳前後(小学1〜2年生)に集中する現象を指す呼称です。報道の中核にある広島県警の集計では、過去5年間に広島県内の交通事故に遭った歩行者3,213人を年齢別に見ると、最多が「
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データベース

時系列データベース入門——ホームサーバー監視から分散AIメトリクスまで、VictoriaMetrics・TimescaleDB・InfluxDBをどう選ぶか

時系列データベース(TSDB)とは何か? 基本のキと仕組み 「ProxmoxのCPU使用率やvLLMのトークン生成速度を毎秒記録したいんだけど、普通のPostgreSQLやMySQLじゃダメなの?」――監視やAIメトリクス収集を始めるとき、誰もがぶつかるこの疑問こそが、時系列データベース(TSDB)を選ぶ理由の入口です。本記事では、ホームサーバー監視から分散AI基盤のメトリクス収集までを題材に、VictoriaMetrics・TimescaleDB・InfluxDBをどう使い分けるかを解説します。 時系列データの特性がRDBと決定的に違う CPU使用率・温度・トークン速度(tokens/sec)のような測定値は、時刻をキーとして高頻度で「追記」され続けます。更新や削除はほぼ起こらず、読み取りは「直近1時間の平均」「過去30日の傾向」といった時間範囲の集計が中心。さらにデータは無限に増え続けるため、古いデータを自動削除する保持期間(retention)管理と、ディスクを圧迫しない高圧縮が必須になります。汎用RDBでも原理的には実現できますが、書き込みスループット・ダウンサンプリン
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政治・社会

沖縄県知事選2026はなぜ「オール沖縄」8年体制を終わらせたのか——42歳・古謝玄太新知事の勝因と、辺野古移設・基地問題の行方を解説

はじめに——沖縄で何が起きたのか(8年ぶりの政権交代) 2026年9月13日、任期満了に伴う沖縄県知事選が投開票され、自民党や日本維新の会など保守勢力が推した無所属新人の古謝玄太(こじゃ・げんた)氏(42)が、3選を目指した現職の玉城デニー氏(66)を破って初当選しました。確定投票率は61.57%に達し、2022年の前回選挙を3.65ポイント上回っています。多くの県民が「県政の刷新」を選んだ——これが、開票の夜のいちばんシンプルな読み解きです。 この結果の重みは、候補者個人の勝敗にとどまりません。時事通信が「12年ぶりの自民(系県政)奪還」と報じたように、2014年の翁長雄志氏当選以来、翁長・玉城の2代にわたって続いてきた「オール沖縄」県政がここに終わりを告げたからです。辺野古への米軍基地移設に反対する勢力が保守・革新の垣根を超えて結集し、県政の与党として沖縄を動かしてきた体制。玉城氏が2018年に就任してからは2期8年。その体制に、今回の選挙結果で終止符が打たれました。 歴史的な節目でもあります。古謝氏は、沖縄が日本本土に復帰した1972年以降に生まれた初めての沖縄県知事であり
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通信技術

Matterでスマートホームの「壁」は崩れたのか——Thread・Wi-Fi・Bridgeを横断する統一規格の仕組みを実装レベルで読み解く

はじめに——「Alexa対応なのに、Google Homeでは使えない」という嘆きはどこまで解消されたのか スマートホームを始めようとしたとき、多くの人がぶつかるのが「メーカーの壁」「プラットフォームの壁」です。A社のロボット掃除機はAlexaでしか操作できない、B社のカメラはHomeKit専用——こうした断片化は長年、スマートホーム普及の最大の足かせでした。ユーザーは性能やデザインではなく「うちの環境で動くか」という基準で製品を選ばざるを得ず、専用アプリは増え続け、クラウド経由の製品ではインターネット障害時に動作しない・応答が遅いといった弱点も抱えていました(https://www.smartwatchlife.jp/60681/)。 この壁を崩すべく登場したのが、Connectivity Standards Alliance(CSA)が策定する統一規格「Matter」です(CSA公式)。2022年10月4日にMatter 1.0がリリースされ、照明・プラグ・スマートロックといった基本カテゴリから始まった対応範囲は、1.2での家電(冷蔵庫・洗濯機・ロボット掃除機など)、1.3での
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中東情勢

サウジの東西パイプラインが攻撃されたら何が起きる?——中東緊張で続く原油100ドル台と、輸入に頼る日本のエネルギー安保のしくみをわかりやすく解説

はじめに——「パイプライン攻撃」はあなたの生活とどうつながるのか? まず結論から述べます。 東西パイプラインとは、サウジアラビアの原油をホルムズ海峡——ペルシャ湾の出口にあたり、世界の海上石油取引の約25%(約2,000万バレル/日)が通る海上の要衝(米エネルギー情報局(EIA) 2025-06-16)——を通らずに輸出するための「もう一つの出口」です。この迂回ルートが攻撃で止まったことで、世界は「海峡封鎖+迂回ルート消失」という二重の供給リスクを抱え込み、原油価格は1バレル100ドルを超える水準で推移していると報じられています(Al Jazeera 2026-09-12)。 2026年9月10日、中東で何が起きたのか。 本稿の出来事の記述は、いずれも執筆時点(2026年9月13日)の報道各社の伝達に基づくことを最初にお断りします。報道によれば、この日の朝、サウジアラビアを東西に貫く「東西パイプライン」のポンプ基地(リヤド地方とマディーナ地方)が、イラク領内から発射された複数のドローンによって攻撃され、火災が発生して負傷者が出たと伝えられています(CNN 2026-09-11)。サ
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通信技術

UWB(Ultra Wideband)入門——「センチメートル測位」でスマートロック・カーキー・Find Myを実現する無線技術の仕組み

はじめに 「かばんの中のAirTagを探しているのに、なかなか見つからない——」そんなとき、iPhoneの画面が「あと2.4メートル、もうちょい左」と距離と方向を矢印で示してくれた経験はないでしょうか。この“もうちょい左”体験を可能にしているのが、UWB(Ultra Wideband:超広帯域無線) です。 私たちの位置情報というと、まずGPSが思い浮かびます。しかしGPS(および準天頂衛星「みちびき」を含むGNSS)は数メートル級の精度しかなく、そもそも電波が届きにくい屋内では使いものになりません。対してUWBは、屋内でもセンチメートル級の測位精度を実現します。AirTagの精密検索だけでなく、ポケットに入れたまま鍵を開けるスマートロック、近づくだけで解錠できるデジタルカーキーなど、「距離を正確に測る無線」として静かに普及が進んでいます。 本記事では、まずUWBとは何か・なぜセンチメートル級の測位が可能なのかを解説し、次に測距の原理(ToF・TWR・AoA)、Bluetooth LEやWi-Fi RTTとの比較、周波数と規制、AirTag・カーキー・スマートロックといった実例、
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国際・地政学

9.11米同時多発テロから25年——世界はどう変わり、何がまだ解決されていないのか

はじめに——25年目の9月11日、グラウンド・ゼロでは何があったのか 2026年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件から25年の節目を迎えました。ニューヨークの世界貿易センター(WTC)跡地、通称「グラウンド・ゼロ」ではこの日、遺族らが参加する追悼式典が開かれました(読売新聞 2026-09-11)。 式典には、事件当時の大統領だったブッシュ(子)氏のほか、クリントン、オバマ、バイデンの各元大統領が出席しました。式典では犠牲者の遺影が掲げられ、最初の旅客機がWTC北棟に突入した時刻などに合わせて黙とうが捧げられました。日本人24人を含む2977人の命が、四半世紀を経て改めて悼まれたのです(読売新聞 2026-09-11)。 一方、トランプ大統領はワシントン近郊の国防総省(ペンタゴン)での式典に出席し、「私たちは決して忘れない。この国とその自由を、未来のあらゆる世代のために守っていく」と述べたと報じられています(読売新聞 2026-09-11)。 25年という歳月は、遺族の世代交代を進め、グラウンド・ゼロの風景も変えました。現在の跡地には9.11メモリアル博物館と犠牲者記念碑が整
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国際・地政学

BRICS首脳会議2026がニューデリーで開幕——11カ国に膨らんだ「非西洋クラブ」は何を決めるのか、日本への影響とあわせてわかりやすく解説

はじめに——今日、世界人口の半分を占める11カ国の首脳がニューデリーに集う 今日2026年9月12日、第18回BRICS首脳会議がインド・ニューデリーで開幕します。会期は9月12日〜13日の2日間。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの中核5カ国に、エジプト、エチオピア、イラン、UAE、インドネシアらを加えた計11カ国(※サウジアラビアの扱いをめぐっては「10カ国」と数える報道もある)の首脳らがニューデリーに集まります。議長国のインドは2012年、2016年、2021年に続き4回目の就任で、公式テーマは「Building for Resilience, Innovation, Cooperation and Sustainability」(レジリエンス・イノベーション・協力・持続可能性の構築)です。 拡大後のBRICSは世界人口の約46%(10カ国換算で約48%とする報道もある)、GDP(購買力平価)で世界の約36%を占めるとされます。「非西洋クラブ」とも呼ばれるこの集団が、非ドル決済、サプライチェーン、エネルギー協力をめぐって何を決めようとしているのか—
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AI・テクノロジー

FPGAはなぜ今また注目されるのか——AIアクセラレータ時代のリコンフィギュラブル論理入門

1. はじめに——「書き換えられるチップ」が静かに返り咲く理由 半導体の世界では、チップの回路は工場を出た瞬間に固定されるのが当たり前です。CPUもGPUも、その内部でどんな演算ユニットがどう配置されているかは製造時点で決まっており、私たちが後から変更できるのは「その上で動くソフトウェア」だけです。 ところが1985年、Xilinx(ザイリンクス、現在はAMD傘下)があるチップを発売しました。XC2064——世界で初めて商業的に成功したFPGA(Field-Programmable Gate Array、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)です。このチップが持っていたのは、工場を出た後でも「中のデジタル回路そのもの」を何度でも書き換えられるという、当時の常識を覆す性質でした。といっても初期の規模は小さく、論理ブロック(CLB)がわずか64個。それが40年余りで数千万ゲート級へと成長したとされ、いまやAIアクセラレータの有力候補として再び脚光を浴びています。 その兆しは、すでにあちこちで報じられています。Microsoftは2014年からBing検索のランキング処理をFPG
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暮らし・文化

中部電力12億円の過大徴収はなぜ起きた?——電気料金の計算仕組みと、請求書で確認すべき4つのポイントをわかりやすく解説

はじめに——「月10円」の誤りが500万件・12億円になった話 2026年9月10日、中部電力と、その販売子会社である中部電力ミライズが会見を開きました。内容は、電気料金の元となる原価の算定を誤った結果、2年以上(約2年5か月)にわたって電気料金を過大に徴収していたため、総額約12億円を利用者に返還する——というものです。 対象は愛知・岐阜・三重・静岡・長野の5県で500万9,000件(総契約数の約57%)。その半数は一般家庭です。ところが、標準的な使用量の家庭で1か月あたり余分に払っていた金額は、なんと月10円。大きなところでも個人営業の飲食店等の最大月152円と、利用者が請求書を見ただけではまず気づけない水準でした。 「月10円」と聞くと小さな金額に思えますが、それが500万件・2年余りにわたって積み重なれば12億円になる——今回のニュースの本質は、電気料金がどう計算されているのか、利用者からはほとんど見えないところで決まっているという点にあります。 そこで本記事では、このニュースを入口に、次の疑問に順を追って答えていきます。 * 電気料金はそもそもどんな仕組みで計算さ
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サイバーセキュリティ

個人メディア『Pottal-Portal』への不正アクセス改ざん事件——1サーバ複数サイト運用のリスクと、気づかれなかった1.5ヶ月

はじめに — 「うちは静的サイトだから大丈夫」は本当に大丈夫か 「サーバー代を節約したいから」と、1台のVPSに個人ブログも実験サイトも、さらに昔運用していたWordPressも、まとめて載せて運用している——そんなサイト運営者は少なくないのではないでしょうか。 本記事で扱うのは、個人メディア「Pottal-Portal」を運営するPottal氏が2026年7月26日に発表した不正アクセス事件です。それによると、pottal-portal.comをはじめ同一サーバー上で運用していた複数のサイトが第三者による不正アクセスを受け、2026年5月下旬からサーバー上のファイルが書き換えられ続けていました。異変に気づいたのは7月15日。実に約1.5ヶ月ものあいだ、被害は気づかれないまま進行していました。 「うちは静的サイトだから大丈夫」「小規模サイトが狙われるはずがない」——そう思っている方こそ、読んでいただきたい事件です。本記事では、①一次情報ベースで追う事件の全容、②「1サーバー複数サイト」運用が被害を広げたリスク構造、③今日から始められる改ざん検知・対策チェックリスト、の3点を整理し
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サイバーセキュリティ

CHERIメモリ保護入門——ポインタ自体に「鍵」を持たせるアーキテクチャはなぜC/C++の脆弱性を減らせるのか

はじめに——C/C++のメモリ脆弱性という「古くて新しい」痛み TL;DR — CHERI(Capability Hardware Enhanced RISC Instructions)は、ポインタ自体に「アクセスしてよい境界」と「権限」を持たせることで、既存のC/C++コードをほとんど書き換えずに、メモリ脆弱性をハードウェアレベルで防ぐアーキテクチャです。ただし、CHERIが単体で保証するのは主に空間的安全性(バッファ越境アクセスの遮断)と権限制御であり、use-after-freeのような時間的安全性については、失効(revocation)などの追加機構が必要で、実装によっては完全には防げない点に注意が必要です。 「バッファオーバーフロー」という言葉が知られるようになってから、すでに数十年が経ちました。それでも、この種の脆弱性はなくなりません。MicrosoftとGoogle(Chrome)がそれぞれ自社製品のセキュリティバグを分析したところ、いずれも約70%がメモリ安全性の問題だったと報告されています(Microsoft分析:ZDNet 2019、Chrome分析:ZDNet
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科学・研究

眠気は脳のどこで作られるのか——ラスカー賞受賞の『オレキシン』発見が変える、ナルコレプシー治療と睡眠の科学

はじめに——2026年9月9日、「眠気」の正体に最高峰の栄冠が 2026年9月9日、米国のラスカー財団が今年の受賞者を発表しました。基礎医学研究賞に選ばれたのは、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長・教授(66)と、米スタンフォード大学のエマニュエル・ミニョー教授の2人です。両氏が解き明かしたのは、私たちが誰でも毎日体験する「眠気」の正体——覚醒を維持する脳内物質「オレキシン」でした。さらに臨床医学研究賞には中外製薬の服部有宏氏(66)、井川智之氏(49)、北沢剛久氏(57)の3人が選ばれ、日本人4人がそろって栄冠に輝いています。授賞式は9月17日、ニューヨークで開かれます(参考: [1][2][4])。 ラスカー賞は1945年に創設された、アメリカ医学界で最高峰とされる賞で、「ノーベル生理学・医学賞に次ぐ名誉」とも「ノーベル賞の登竜門」とも呼ばれます。その呼び名を裏付けるのが数字です。過去の受賞者のうち66人がノーベル生理学・医学賞を、27人がノーベル化学賞を受賞してきました(2020年時点の集計による[11])。朝日新聞は「ラスカー賞の受賞者の3.6人に1人がノー
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AI・テクノロジー

産業イーサネットの「時間」を司るTSN(Time-Sensitive Networking)入門——ロボット・FA機器の神経系はなぜ決定論的なのか

はじめに:工場のネットワークに「時間」はあるか 工場の現場を思い浮かべてほしい。ロボットアームがミリ秒単位の制御周期で動き、センサーとPLCが絶え間なくデータをやり取りしている。その流通を支えているのは、オフィスと何ら変わらない標準イーサネット(IEEE 802.3)とそのスイッチだ。しかし、ここに一つの根本的な問題が潜んでいる。標準イーサネットは「ベストエフォート」の通信方式であり、フレームがいつ届くかについて何の保証もしない。 具体的な場面を例にとってみよう。制御ネットワークと事務ネットワークがつながった工場で、誰かが大容量のバックアップ転送を開始したとする。標準的なイーサネットスイッチには「時間」の概念がないため、この巨大なフレームの伝送が制御フレームの送出をブロックし得る。標準的なブリッジには輻輳時に制御フレームを優先保護する仕組みがなく、輻輳時の回復は主に上位層の再送に委ねられるためだ。平均的な遅延は小さくても、個々のフレームの遅延は大きくばらつく。NC機器の制御フレームが数ミリ秒単位で遅れれば、サーボの追従に乱れが生じる。これが産業現場で長年、標準イーサネットを制御系に
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教育

OECD学力調査で日本が3分野トップ——PISAの結果を世界と比較して読む、『学力上位』の意味と課題

1. はじめに: 「日本が3分野トップ」って何がすごいのか 2026年9月8日、OECD(経済協力開発機構)は国際学力調査「PISA 2025」の結果を公表しました。91か国・地域・約76万人の15歳が参加した大規模な調査で、日本は「読解力」「数学的リテラシー」「科学コンピテンシー」の3分野すべてでOECD加盟国中1位——2000年の調査開始以来、初めての結果となりました(出典: 国立教育政策研究所・文部科学省「PISA2025のポイント」2026年9月8日公表、読売新聞2026年9月8日付)。 ニュースで「日本3分野トップ」という見出しを目にした方も多いでしょう。ただ、この結果、数字を丁寧に読むと意外な事実が見えてきます。 まず押さえたいのは、「1位」の中身です。今回の1位は「OECD加盟国の中での1位」。参加したすべての国・地域(91か国・地域)で比べると、日本は科学5位・読解力4位・数学5位であり、上位には非OECDの中国(北京・上海・江蘇・
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