通信技術 UWB(Ultra Wideband)入門——「センチメートル測位」でスマートロック・カーキー・Find Myを実現する無線技術の仕組み はじめに 「かばんの中のAirTagを探しているのに、なかなか見つからない——」そんなとき、iPhoneの画面が「あと2.4メートル、もうちょい左」と距離と方向を矢印で示してくれた経験はないでしょうか。この“もうちょい左”体験を可能にしているのが、UWB(Ultra Wideband:超広帯域無線) です。 私たちの位置情報というと、まずGPSが思い浮かびます。しかしGPS(および準天頂衛星「みちびき」を含むGNSS)は数メートル級の精度しかなく、そもそも電波が届きにくい屋内では使いものになりません。対してUWBは、屋内でもセンチメートル級の測位精度を実現します。AirTagの精密検索だけでなく、ポケットに入れたまま鍵を開けるスマートロック、近づくだけで解錠できるデジタルカーキーなど、「距離を正確に測る無線」として静かに普及が進んでいます。 本記事では、まずUWBとは何か・なぜセンチメートル級の測位が可能なのかを解説し、次に測距の原理(ToF・TWR・AoA)、Bluetooth LEやWi-Fi RTTとの比較、周波数と規制、AirTag・カーキー・スマートロックといった実例、
防災・災害 十勝岳が噴火警戒レベル3「入山規制」へ——北海道の火山で初、大正泥流100年目の警告 札幌管区気象台は2026年9月12日午前9時30分、北海道・十勝岳の噴火警戒レベルを2から3「入山規制」へ引き上げました。道内の火山でレベル3が適用されるのは初めてです。何が根拠になったのか、警戒レベル3は何を意味するのか、そして144人が犠牲になった大正泥流から100年の節目に、この山が抱えるリスクを整理します。
AI・テクノロジー UnitBoost:複合LLMシステムの「管理役」はLLMである必要があるのか——生成モデルを決定的なマージ演算子で置き換える はじめに:複数のLLMを束ねるシステムに潜む「見えない管理者」 複合LLMシステム(compound LLM system)とは、1回のモデル呼び出しで答えを出すのではなく、複数の呼び出しの結果を組み合わせて最終的な答えを組み立てる仕組みを指す。たとえば、検索した複数の文書を別々のワーカーに読ませて多段の質問に答えるRAGのマルチホップ質問応答、複数モデルの案を1つに統合するMixture-of-Agents、複数のエージェントに議論させて合意を取るマルチエージェント・ディベート、自分の出力を批評して書き直す自己改良ループなどがこれにあたる。いずれも「複数の案をどう1つに畳むか」という共通の問題を抱えている。 こうしたシステムには、必ず「管理者(manager)」がいる。管理者の仕事は次の3つの決定に整理できる。 決定 問い 具体例 統合(assembly) ワーカーの部分結果をどう最終出力にまとめるか 3つの候補からどの答えを採用するか 配分(allocation) 未解決の部分に次の呼び出しをどう割り当てるか 欠けている項目を誰に調べさせるか 停止(
国際・地政学 9.11米同時多発テロから25年——世界はどう変わり、何がまだ解決されていないのか はじめに——25年目の9月11日、グラウンド・ゼロでは何があったのか 2026年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件から25年の節目を迎えました。ニューヨークの世界貿易センター(WTC)跡地、通称「グラウンド・ゼロ」ではこの日、遺族らが参加する追悼式典が開かれました(読売新聞 2026-09-11)。 式典には、事件当時の大統領だったブッシュ(子)氏のほか、クリントン、オバマ、バイデンの各元大統領が出席しました。式典では犠牲者の遺影が掲げられ、最初の旅客機がWTC北棟に突入した時刻などに合わせて黙とうが捧げられました。日本人24人を含む2977人の命が、四半世紀を経て改めて悼まれたのです(読売新聞 2026-09-11)。 一方、トランプ大統領はワシントン近郊の国防総省(ペンタゴン)での式典に出席し、「私たちは決して忘れない。この国とその自由を、未来のあらゆる世代のために守っていく」と述べたと報じられています(読売新聞 2026-09-11)。 25年という歳月は、遺族の世代交代を進め、グラウンド・ゼロの風景も変えました。現在の跡地には9.11メモリアル博物館と犠牲者記念碑が整
国際・地政学 BRICS首脳会議2026がニューデリーで開幕——11カ国に膨らんだ「非西洋クラブ」は何を決めるのか、日本への影響とあわせてわかりやすく解説 はじめに——今日、世界人口の半分を占める11カ国の首脳がニューデリーに集う 今日2026年9月12日、第18回BRICS首脳会議がインド・ニューデリーで開幕します。会期は9月12日〜13日の2日間。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの中核5カ国に、エジプト、エチオピア、イラン、UAE、インドネシアらを加えた計11カ国(※サウジアラビアの扱いをめぐっては「10カ国」と数える報道もある)の首脳らがニューデリーに集まります。議長国のインドは2012年、2016年、2021年に続き4回目の就任で、公式テーマは「Building for Resilience, Innovation, Cooperation and Sustainability」(レジリエンス・イノベーション・協力・持続可能性の構築)です。 拡大後のBRICSは世界人口の約46%(10カ国換算で約48%とする報道もある)、GDP(購買力平価)で世界の約36%を占めるとされます。「非西洋クラブ」とも呼ばれるこの集団が、非ドル決済、サプライチェーン、エネルギー協力をめぐって何を決めようとしているのか—
AI・テクノロジー AI生成レシートが経費精算を壊す——見抜ける確率50.1%の現実 ChatGPT Images 2.5で作られたレシート画像が本物と見分けがつかないとして話題に。人間の判別正答率は50.1%というコイン投げ同然の調査もある。AI生成レシートが経費精算に突きつけた問題と、企業が打つべき対策を整理する。
科学・研究 レゾナックが注目される理由──廃プラスチックを「都市油田」に変える再資源化技術と半導体材料の現在地 はじめに レゾナックをめぐっては、廃プラスチックの再資源化と半導体材料という、一見すると異なる分野のつながりが注目されています。再資源化は、廃棄物を新たな原料として利用し、資源やエネルギーの循環を目指す取り組みです。一方、半導体材料は、集積回路の製造工程で使われる高純度の素材群を指します。 両分野の接点では、原料の安定供給、品質管理、コスト、規制への適合性が重要になります。廃プラスチック由来の原料を高機能素材に活用できれば、資源循環と素材産業の高度化を同時に進められる可能性があります。ただし、実用化の時期や規模は技術の成熟度、地域の制度、事業採算性によって変わるため、現段階では可能性と課題を分けて見る必要があります。 レゾナックの事業領域 レゾナックに関連して語られる主要なテーマの一つが、廃プラスチックの再資源化です。代表的な手法の一つであるケミカルリサイクルは、プラスチックを化学的に分解・変換し、原料や化学品として再利用する技術の総称です。もう一つの重要な領域が、半導体の製造に使われる高機能・高純度材料の開発と供給です。 両分野を組み合わせる場合、廃プラスチックから得た物
AI・テクノロジー FPGAはなぜ今また注目されるのか——AIアクセラレータ時代のリコンフィギュラブル論理入門 1. はじめに——「書き換えられるチップ」が静かに返り咲く理由 半導体の世界では、チップの回路は工場を出た瞬間に固定されるのが当たり前です。CPUもGPUも、その内部でどんな演算ユニットがどう配置されているかは製造時点で決まっており、私たちが後から変更できるのは「その上で動くソフトウェア」だけです。 ところが1985年、Xilinx(ザイリンクス、現在はAMD傘下)があるチップを発売しました。XC2064——世界で初めて商業的に成功したFPGA(Field-Programmable Gate Array、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)です。このチップが持っていたのは、工場を出た後でも「中のデジタル回路そのもの」を何度でも書き換えられるという、当時の常識を覆す性質でした。といっても初期の規模は小さく、論理ブロック(CLB)がわずか64個。それが40年余りで数千万ゲート級へと成長したとされ、いまやAIアクセラレータの有力候補として再び脚光を浴びています。 その兆しは、すでにあちこちで報じられています。Microsoftは2014年からBing検索のランキング処理をFPG
AI・テクノロジー Androidがパスワードマネージャー間の直接移行に対応——脱「平文CSV」とパスキーポータビリティを実現するFIDO CXPの衝撃 GoogleがAndroidでパスワードマネージャー間の安全な直接移行機能をリリース。危険な平文CSVエクスポートを廃止し、移行困難だったパスキーの安全な移動をFIDO CXP/CXF標準で実現。ベンダーロックインの終焉と認証の未来を徹底解説します。
AI・テクノロジー OpenAIがPro新規停止 Astra需要とAI推論キャパシティの壁 OpenAIが月200ドルのProプラン新規受付を一時停止した。理由は需要の低迷ではなく、その逆——GPT-6 Astraへの前例のない需要がインフラを圧迫したためだ。同じ日、NVIDIAのJensen Huangは来期70%成長を明言した。AI業界の制約が「モデルの賢さ」から「推論キャパシティ」へ移った瞬間を読み解く。
AI・テクノロジー 「もっともらしい嘘」を信じ込むAIエージェント——ツール返却への過信を14モデル×3ツールで測った はじめに: エージェントは「ツールが正しい」という前提で動いている ツール呼び出し型エージェントは、今や「検索して・コードを実行して・サブエージェントに任せる」のが標準の運用になった。ReAct や AutoGen をはじめ、ToolLLM、BFCL、τ-Bench といった系譜を通じて、LLM が外部ツールの返却を踏まえて最終回答を組み立てる設計は広く普及している。ここには暗黙の前提がある。「ツールは信頼できる情報を返す」という仮定だ。 しかしこの前提は崩れ始めている。検索エンジンは AI 生成の回答そのものを返し(ChatGPT Search、Google AI Mode など)、サブエージェントは「要約」という生成物を返し、コード実行は LLM が生成したプログラムの出力を返す。ツール返却は決定的な計算結果から、「もっともらしいが誤り」を含みうる生成物へと性質を変えた。 この問題は従来の知識コンフリクト研究(ClashEval、HoH など)や AgentNoiseBench、DRNOISE の性能評価では捉えきれない。
暮らし・文化 中部電力12億円の過大徴収はなぜ起きた?——電気料金の計算仕組みと、請求書で確認すべき4つのポイントをわかりやすく解説 はじめに——「月10円」の誤りが500万件・12億円になった話 2026年9月10日、中部電力と、その販売子会社である中部電力ミライズが会見を開きました。内容は、電気料金の元となる原価の算定を誤った結果、2年以上(約2年5か月)にわたって電気料金を過大に徴収していたため、総額約12億円を利用者に返還する——というものです。 対象は愛知・岐阜・三重・静岡・長野の5県で500万9,000件(総契約数の約57%)。その半数は一般家庭です。ところが、標準的な使用量の家庭で1か月あたり余分に払っていた金額は、なんと月10円。大きなところでも個人営業の飲食店等の最大月152円と、利用者が請求書を見ただけではまず気づけない水準でした。 「月10円」と聞くと小さな金額に思えますが、それが500万件・2年余りにわたって積み重なれば12億円になる——今回のニュースの本質は、電気料金がどう計算されているのか、利用者からはほとんど見えないところで決まっているという点にあります。 そこで本記事では、このニュースを入口に、次の疑問に順を追って答えていきます。 * 電気料金はそもそもどんな仕組みで計算さ
サイバーセキュリティ 個人メディア『Pottal-Portal』への不正アクセス改ざん事件——1サーバ複数サイト運用のリスクと、気づかれなかった1.5ヶ月 はじめに — 「うちは静的サイトだから大丈夫」は本当に大丈夫か 「サーバー代を節約したいから」と、1台のVPSに個人ブログも実験サイトも、さらに昔運用していたWordPressも、まとめて載せて運用している——そんなサイト運営者は少なくないのではないでしょうか。 本記事で扱うのは、個人メディア「Pottal-Portal」を運営するPottal氏が2026年7月26日に発表した不正アクセス事件です。それによると、pottal-portal.comをはじめ同一サーバー上で運用していた複数のサイトが第三者による不正アクセスを受け、2026年5月下旬からサーバー上のファイルが書き換えられ続けていました。異変に気づいたのは7月15日。実に約1.5ヶ月ものあいだ、被害は気づかれないまま進行していました。 「うちは静的サイトだから大丈夫」「小規模サイトが狙われるはずがない」——そう思っている方こそ、読んでいただきたい事件です。本記事では、①一次情報ベースで追う事件の全容、②「1サーバー複数サイト」運用が被害を広げたリスク構造、③今日から始められる改ざん検知・対策チェックリスト、の3点を整理し
AI・テクノロジー 富士通とPalantirが踏み込んだAIの「越えてはならない一線」──協業拡大の裏にあるオントロジー統合と個人追跡排除の深層 富士通が米Palantir Technologiesとの戦略的提携を拡大し「Global FDE Partner」体制を強化。オントロジーによるAI業務実装を進める一方、個人追跡を用途とする案件は「アウト」と明言。データ統合の威力とプライバシー境界の深層を解き明かします。
AI・テクノロジー AIエージェントに「身分証」を——KYA相互運用フレームワークとは Ant International・Mastercard・Visaが2026年9月10日、AIエージェントの身元を確認する「Know-Your-Agent(KYA)」相互運用フレームワークの共同開発に着手。2030年に3〜5兆ドルとされるエージェント型コマースを前に、カード網は何を統一し、何を各社に残すのか。MASのSAFRとの関係と未解決の論点を整理します。
暮らし・文化 レクサスLSの新型・高級車市場で注目される理由を解説 はじめに 高級セダン市場で注目を集めているレクサスLS。技術やデザイン、快適性への関心が高まるなか、LSへの買い替えや購入を検討する人も少なくありません。この記事では、LSが注目される理由を過度に断定せず、購入検討時に役立つ視点として整理します。 高級セダンとは 高級セダンとは、上質な素材、静粛性、乗り心地、先進運転支援などを総合的に高め、日常の使いやすさと長距離移動の快適性を両立する車種です。LSは、その品質感と技術力によって高級セダン市場の上位を目指す、レクサスのフラッグシップ級モデルです。外観の洗練、内装の質感、シートのサポート性、インフォテインメントの使いやすさが主な特徴です。 本記事では、LSの魅力をデザイン、走行性能、安全、電動化の観点から確認し、購入時に見落としやすいポイントも紹介します。対象は、LSへの買い替えを考えている人や、最新の高級車技術と快適性に関心がある人です。 LSの現状と市場ポジション LSは、静粛性と上質な内装、長距離での快適性を軸に、日常使いと特別な移動の両立を目指すモデルです。グローバルではMercedes-Benz S-Class、
サイバーセキュリティ CHERIメモリ保護入門——ポインタ自体に「鍵」を持たせるアーキテクチャはなぜC/C++の脆弱性を減らせるのか はじめに——C/C++のメモリ脆弱性という「古くて新しい」痛み TL;DR — CHERI(Capability Hardware Enhanced RISC Instructions)は、ポインタ自体に「アクセスしてよい境界」と「権限」を持たせることで、既存のC/C++コードをほとんど書き換えずに、メモリ脆弱性をハードウェアレベルで防ぐアーキテクチャです。ただし、CHERIが単体で保証するのは主に空間的安全性(バッファ越境アクセスの遮断)と権限制御であり、use-after-freeのような時間的安全性については、失効(revocation)などの追加機構が必要で、実装によっては完全には防げない点に注意が必要です。 「バッファオーバーフロー」という言葉が知られるようになってから、すでに数十年が経ちました。それでも、この種の脆弱性はなくなりません。MicrosoftとGoogle(Chrome)がそれぞれ自社製品のセキュリティバグを分析したところ、いずれも約70%がメモリ安全性の問題だったと報告されています(Microsoft分析:ZDNet 2019、Chrome分析:ZDNet
iPhone 「iPhone Duo」36万4,800円——Appleが折りたたみに参入し、無印iPhone 18が消えた年 2026年9月9日(米国時間)、Appleが初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」を発表。日本価格は36万4,800円から。同時に、毎年恒例だったベースモデルのiPhone 18は姿を見せませんでした。新CEOジョン・ターナス体制の初イベントが示したラインナップ再編と価格の変化を読み解きます。
AI・テクノロジー LLMエージェントを「重み」ではなく「状態」で進化させる──AutoFynが示す非パラメトリックExpert Iteration はじめに:長時間稼働エージェントが直面する「3つの壁」 2026年現在、LLMエージェントは数時間から数日にわたり、数百回のモデル呼び出しとツール操作を連続して行うのが当たり前になっています。代表例は、SWE-bench系で見られるリポジトリ横断コーディングや、Reflexion・Self-Refineのような自己リフレクション型のループです。こうした「長時間稼働(long-horizon)」エージェントは、単発の質問応答とは質の異なる問題を抱えます。本記事では、それを「3つの壁」として整理します。 壁1「コンテキスト腐敗」。単一セッションのコンテキストが伸び続けると、モデルは長い文脈を均等に扱えず「真ん中の情報」を忘れます。これはLost in the Middle(Liu et al. 2024)として知られる現象で、途中で得た重要な仕様や結論が後段の判断から消えてしまう原因になります。会話が長くなるほど、後半の推論は前半の前提を正確に参照できなくなります。 壁2「自己評価の限界」。LLMは外部フィードバックなしに自分の推論を正しく訂正できません(Huang et al. 2
科学・研究 眠気は脳のどこで作られるのか——ラスカー賞受賞の『オレキシン』発見が変える、ナルコレプシー治療と睡眠の科学 はじめに——2026年9月9日、「眠気」の正体に最高峰の栄冠が 2026年9月9日、米国のラスカー財団が今年の受賞者を発表しました。基礎医学研究賞に選ばれたのは、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長・教授(66)と、米スタンフォード大学のエマニュエル・ミニョー教授の2人です。両氏が解き明かしたのは、私たちが誰でも毎日体験する「眠気」の正体——覚醒を維持する脳内物質「オレキシン」でした。さらに臨床医学研究賞には中外製薬の服部有宏氏(66)、井川智之氏(49)、北沢剛久氏(57)の3人が選ばれ、日本人4人がそろって栄冠に輝いています。授賞式は9月17日、ニューヨークで開かれます(参考: [1][2][4])。 ラスカー賞は1945年に創設された、アメリカ医学界で最高峰とされる賞で、「ノーベル生理学・医学賞に次ぐ名誉」とも「ノーベル賞の登竜門」とも呼ばれます。その呼び名を裏付けるのが数字です。過去の受賞者のうち66人がノーベル生理学・医学賞を、27人がノーベル化学賞を受賞してきました(2020年時点の集計による[11])。朝日新聞は「ラスカー賞の受賞者の3.6人に1人がノー
AI・テクノロジー DeepSeekが上海科創板IPOへ——中信証券起用と評価額5,000億元の内実 中国AI企業DeepSeekが中信証券を起用し、上海科創板への上場準備に入ったとロイターが報道。最新評価額5,000億元に対し、2026年1〜7月の売上は4.75億元、純損失は7.15億元。赤字AI企業の上場という論点を数字と制度から読み解きます。
AI・テクノロジー LLMデコンパイラは「コンパイルが通る」ほど正しくない——再コンパイル可能性が隠す挙動乖離と、脆弱性が「消える」問題 LLMデコンパイラは「ビルドが通る・同梱テストが通る」だけで評価されていますが、新研究はビルド率が上がるほど挙動一致率が下がる逆説を実証。公開済み脆弱性の最大1割がデコンパイルで「消える」問題を、Decompile-Divergeの仕組みとともに解説します。
AI・テクノロジー 医療AIの学習データの偏りが診断に与えるリスクと、患者が確認すべきポイント 序章:背景と動機 医療現場では、画像の解析やリスク評価など、さまざまな場面でAIの活用が進んでいます。大量の情報を短時間で処理できるAIは、医師の診療を支える有用な道具です。一方で、AIの性能は学習に使ったデータの内容に大きく左右されます。データが特定の集団に偏っていると、患者の属性や診療環境によって提案の精度に差が生じる可能性があります。 医療AIとは、医師の診療や意思決定を支援するアルゴリズム群です。医師の判断を自動的に置き換えるものではなく、適切な監視と人の判断との組み合わせを前提とします。本記事では、学習データの偏りが何を意味するのか、診断にどのようなリスクをもたらすのかを整理し、患者と医療者が安全に活用するための確認ポイントを紹介します。 学習データの偏りとは何か 学習データの偏りとは、AIが学習するデータが特定の属性や状況に過度に集中し、現実の患者集団全体を十分に代表できない状態です。地域、年齢、性別、疾患の段階、検査機器などの分布が実際の診療現場と異なると、学習時には高い性能を示していても、別の環境では精度が低下することがあります。 偏りが生じる原因は一つでは
AI・テクノロジー 産業イーサネットの「時間」を司るTSN(Time-Sensitive Networking)入門——ロボット・FA機器の神経系はなぜ決定論的なのか はじめに:工場のネットワークに「時間」はあるか 工場の現場を思い浮かべてほしい。ロボットアームがミリ秒単位の制御周期で動き、センサーとPLCが絶え間なくデータをやり取りしている。その流通を支えているのは、オフィスと何ら変わらない標準イーサネット(IEEE 802.3)とそのスイッチだ。しかし、ここに一つの根本的な問題が潜んでいる。標準イーサネットは「ベストエフォート」の通信方式であり、フレームがいつ届くかについて何の保証もしない。 具体的な場面を例にとってみよう。制御ネットワークと事務ネットワークがつながった工場で、誰かが大容量のバックアップ転送を開始したとする。標準的なイーサネットスイッチには「時間」の概念がないため、この巨大なフレームの伝送が制御フレームの送出をブロックし得る。標準的なブリッジには輻輳時に制御フレームを優先保護する仕組みがなく、輻輳時の回復は主に上位層の再送に委ねられるためだ。平均的な遅延は小さくても、個々のフレームの遅延は大きくばらつく。NC機器の制御フレームが数ミリ秒単位で遅れれば、サーボの追従に乱れが生じる。これが産業現場で長年、標準イーサネットを制御系に
AI・テクノロジー Armが描くエージェント型AI時代の全貌:モバイル・クラウド・ロボティクスを貫く3大新基盤と半導体エコシステムの地殻変動 Armが2026年9月8日に発表した「CSS for Mobile 2」「Neoverse CSS N4」「Total Design for Physical AI」の3大技術基盤を徹底解説。自律型エージェントAIが要求する過酷な推論負荷と物理世界のリアルタイム制御に、Armがどのように挑むのか。半導体産業の未来を解き明かします。